75Ωダミーの使い道

拙生のジャンク箱を興味深げにひっくり返していた友人が
M(J)-F(PにJJ付き)の変換コネクタを見つけて、一体こんなの
なにするん??と訊いてきました。
一瞬何に使うのだったか自身も忘れていて思い出すまでに
10秒程掛かりました。(笑

FコネはTV受信用の75Ω系で使われます。
実はコレ、75Ωのダミーを使ってアンテナまでの
同軸ケーブル長が、計算通り
 λ/2 x 整数倍 x 速度係数(波長短縮率) 
になっているのかの確認用なのです。

つまり先端に75Ωのダミーを接続し、反対端を
アンテナアナライザで測定するのです。
例えば同軸ケーブル長が
 λ/4 x 奇数倍 x 速度係数
であれば、アンテナアナライザは33.3333・・Ωを
示すことになります。
(50^2/75=33.33333)
で、繋いだアンテナアナライザが75Ωを示せば
λ/2 x 整数倍 x 速度係数になっているので
合格ということです。

(以降実際の計算以外は速度係数の記載を省きます。)

もちろんこれはHF用であり、6mあたりでは
50Ωの無誘導抵抗を2本平行に並べ、片端をショート、
反対端に端子を付けて最短距離で同軸ケーブルを接続します。
(配線が最短距離になるための技)
シリーズの接続で100Ωとなるので、電気的なλ/4の
奇数倍なら25Ω、λ/2の整数倍なら100Ωと表示します。
配線長の影響を配慮すれば2mあたりまでは使えます。
(勿論HFでもこの方法が使えます。)

友人曰く、モノバンダ-なら良いけど、14/21/28の
トライバンダ-はどぉすりゃイイのさ?

14をλ/2の整数倍とすれば28もλ/2の整数倍となります。

例(速度計数が0.67の同軸ケーブル)

(300/2)/14×0.67≒7.18(m)

この5倍の長さの35.9mを引き込みケーブル長とすると、
28では、λ/2の10(整数)倍となりますが、21では
7.5倍となり、つまりλ/4の15倍、まさに奇数倍となります。

この状態で例えば75+j30Ωである21MHzアンテナを測定すると、
Rは33.3333Ω、インダクティブのリアクタンス成分も
逆転してキャパシティブに見えてしまいます。

この原理を分かっていれば表示に騙されることはありませんが、
同軸ケーブル長の考慮なしの状態でこのような表示をされると、
実際はエレメントが長すぎるのに、短いのではと判断してしまいます。

 余談1
 アマチュア用安価版ではリアクタンス成分を
 表示しても、インダクティブなのかキャパシティブ
 なのかまでは分からないものがありますので、
 これは最初っから騙される要素はありません。(笑
 
アンテナの実際と同じ表示しなければ許さん!
という方は、21のみ2.39m(λ/4)の延長ケーブルを
使ってλ/2の8(整数)倍とし測定します。
なお延長ケーブルは測定のためなので、実際の
運用時には外しておくと良いでしょう。

*注 
・例はバンドの中心周波数ではありません。
 10D2Vなどの速度計数の実測では0.66〜0.68などと
 メーカだけでなく、ロッドによっても多少
 異なるので要注意です。@実測必須
・F-Mコネクタの変換部分は、波長から見て
 無視できる程度の長さにしなければなりませんが、
 HFにおいてMJ-FP変換コネクタにFA-JJを
 付けたぐらいでは問題ありません。
 本当はMJ-FJがあれば最高なので探しましたが
 見当たらず、F-JとM-Jコネクタを繋いで作った
 ことがありますが、いくらケーブルを短くしようと
 しても、結局FA-JJ程度の配線長にはなりますので
 無駄な抵抗でありました。。。
・あくまでアンテナ調整をしやすくするためであり、
 同軸ケーブルを切り詰めて送信機の最適負荷に
 近づけるなどのノウハウとは異なります。

75や100Ωでなくとも、ショートやオープンでも
分かるでしょ?って声が聞こえてきそうです。
でもこの時点で使用していた自作アナライザーは
5〜100Ω程度に可変抵抗をスプレッドしてあり、
ゼロや無限大は測定不可なんです。

ちなみにこいつはC分のリアクタンス測定には
ウィーンブリッジの変形を採用したので、可変抵抗に
VCを抱かして測定。
L分の時はVCを切り替えて測定試料側(アンテナ端子)に
抱かせて平衡条件を満たした時の値を読み取りました。
いずれの値も容量の生値であり、リアクタンス値を得るには、
直並列変換だの小難しい計算が必要で、当時は関数電卓か
ポケコンが必須でしたが、面倒なのでよく使う周波数における
変換チャートを作成し対応していました。

しかしさほど性能の良くない拙生の頭でも、慣れてくると
恐ろしい物で、盛んに製作や調整に励んでいた21MHz
あたりでは、何pFだから何cm足りないとか、長すぎという
おおよその値が頭に叩き込まれるようになり、特に不便は
感じませんでした。

その後間違ってパワーを突っ込んで壊してしまい、
初めてD社のアンテナアナライザを購入しましたが、
似たような手法でリアクタンス成分を見ています。
というか、自作したものはその回路を基本にして、
変形したもので作ったというのが本当のところであります。
(L分測定時にVCを測定端にパラに入れるか
           シリーズに入れるかの違い)

現在ではアマチュア向けでも、R±jXで表示したり、
バンド内をスイープしてf特を表示したりと、
面倒な計算や表示は内部のマイコンが大活躍です。
しかし基本は如何にに検出し如何にに表示するかです。
50Ω系で測定していてVSWRが1.0と表示しているのに
インピーダンスは44Ωを表示したアナライザーが
ありましたが、このような基本から外れているものに
マイコンを組み合わせて計算させても、測定値はあまり
信用できませんよね。
派手なマルチ表示は楽しいかもしれませんが。。。

いくつかのメーカ製で試してみましたが、リアクタンス成分に
対応した調整部分を持たないものは、測定試料のリアクタンス
成分が大きくなると、ものによって様々な異なる測定値となり、
理屈上計算値との誤差も大きいようです。

ま、20分の1くらいの価格では業務用の専用アナライザと
同様なスペックを求めるのには、ちょっと無理があると
言うことですか。。

細かいことを言わなければ・・・
同軸ケーブル長だけ守ることで、アンテナ調整の指標として
十分使えるものではあります。

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