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入出力πネットワーク

リニアアンプの設計時に、計算はいろいろでてきますが、
ここではGGアンプの入出力回路に使うπ型の説明をします。

パイ型の回路を組むときに、各部品の定数を正確に計算するためには、
コイルやコンデンサの容量のみならず、真空管の入出力容量や、
配線等による浮遊容量、おおよその値しか分からない電流値等もあり、
よほど運が良くない限りは、結局最後にカットアンドトライで調整を
することになります。
だからと言って、まったく見当もつけずに闇雲に設計しては、間違いなく
遠回りですし、それこそ成功は運任せになってしまいます。

最後はカットアンドとライト決め込めば、おおよその値で設計しても
良いわけで、細かい計算は抜いて、簡易型で計算することにします。

■入力回路■

1 回路Q
2 ドライブ電力
3 周波数
4 球の入力インピーダンス
5 球の入力容量

自身で決めるのは1,2,3です。
入力回路はインピーダンスマッチングだけ機能すればよいので、
回路Qは2程度で十分と言われていますが、私のようなへそ曲がりは、
帯域幅が狭くてもよいバンドでは、Q4位でやります。

ドライブ電力は、エキサイターやアンプに使う球の特性から決定します。

周波数は下から上まで出るのなら中心周波数で良いでしょう。
CW(またはSSB)しか出ないという方は、その周波数で設計します。

4と5の値は、球の特性表から引っ張り出してください。
球の入力インピーダンスが分からない場合、エキサイターからの
電力とそのドライブでIPとグリッド電流の合計がどれだけ流れるか、
ということで計算はできますが、特殊な球でない限り、探せば
必ずどこかに書いてあります。

LCの容量が決まって、部品を揃える段階になったときの注意です。
入力回路は扱う電力が小くはありますが、低インピーダンスゆえに
大きな電流が流れます。
Lの線材が細かったり、Cの耐圧ばかりに気をつけていると、
パワーをロスするだけでなく、発熱による事故にもつながりかねません。
また狭いスペースに押し込んだ場合、コイルの裸Qを下げたり
熱もこもるので、スペースや配置、通風にも気を配りましょう。

■出力回路■

1 回路Q
2 プレート電圧
3 プレート電流
4 周波数
5 球の出力容量

回路Qは通常10~15とされ、一般的には12くらいが多く採用されます。
回路Qを大きく取ると、タンク回路のフライホイール効果が増すことにより
綺麗な出力にはなりますが、損失が大きくなりその分発熱も増大しますので、
ほどほどにしたほうが身のためです・・・

プレート電圧・電流は球の特性表と、ドライブに使うエキサイターの出力から
決定しますが、パワーを搾り出したいあまりの規格を大きく逸脱したような
設計は危険を伴いますので、特性表を穴の開くまで眺めながら、球の性質を
よく把握して、余裕のある設計をしてください。

実はこの電圧と電流で出力インピーダンスを決定しているのですが、
この計算は動作させるクラスにより変わってきます。
ここではやはり最後にはカットアンドトライということで、えいやっと
『Z =(プレート電圧)/(プレート電流×1.8)』という一般的な値で
やっています。
x1.8はB級、AB1級ならx1.5程度で・・・という記述も見かけますが、
実験の結果、拙生はAB1級でx1.8、B級ならx2を初期値に採用しています。

周波数と出力容量に関しては、入力回路と一緒です。

これらが計算出来るExcelファイルは →ココ← からダウンロードできます。
(入力回路の記入欄にIp・Ig・Pdとありますが、現在は機能させておりません。)

Excelはマクロを有効にするため、セキュリティを中にしてください。
誓っておかしなものは忍ばせておりませぬ。

■ 入出力回路とも、シールド板等から十分距離を取らないと、
  コイル直径や巻き数による計算値から、かけ離れたものとなります。
  裸Qも下がり、ひどい時はまともなチュニングが取れなくなります。
  できればコイル直径と同程度離すのが理想ですが、無理な場合は
  せめて半径分はスペースを確保してください。
  
  構造にもよりますが、大型のローラーインダクタ(通称バリL)を
  シャーシに直に取り付けると当然距離がとれません。
  厚手のベーク板で5cm浮かしたら、10MHzにおいて20%弱余計にパワーが
  出てくれてびっくりしたことがあります。

 

 
数式を使わずに空芯コイルを語る

リニアアンプの出力回路に使用するコイルは、
動作周波数における必要インダクタンスと、コイル自体の
Qの高さが要求されます。

インダクタンスは動作周波数、プレートインピーダンスと、
タンク回路のQにより決定されます。
π型であれば、回路Qは12~13が一般的であり、もちろん
Qが高いほどフライホイール効果は大きく、スプリアス
除去に寄与しますが、その分損失も大きくなります。
Qは15位まではスプリアス除去に効果がありますが、
それ以上にしてもロスが目立つようになるだけです。

回路Qとは別にコイル自体のQがあります。
QはクオリティのQであり、コイルのQは部品としての
コイルの性能そのものです。
Qが高いコイルとは損失が少ないコイルということで、
どのようなコイルにも求められるものですが、
特にリニアアンプのように大電力を少しでもロスなく、
スプリアスは軽減させて出力したいタンクコイルとしては、
最重要ファクタの1つであります。

コンデンサにも1/tanδというQありますが、RF的に
適切なものを使用する限り、コイルのQと比べると
かなり高いので、共振時における損失のほとんどは
コイルで発生すると言えます。

そこでコイルで発生する損失にしぼって考えてみます。

■ 実効抵抗
  コイル自体の抵抗ですが、例えば一般的に使用される
  5mmの銅パイプで10ターンや15ターン程度のコイルに
  おいては、あまり気にするような損失はないでしょう。
  トップバンドなどで2mm以下の線材を使用した時などは
  影響が出てきます。

■ 表皮効果
  周波数が高いほど電流は導体の表面を流れます。
  表面積が小さいほど抵抗分が増加しQを下げます。
  
  ハイバンドにおいては銅パイプなどでコイルを形成
  することは容易ですので、ぜひパイプを使ってください。
  無垢のものは中心に存在する導体が損失の原因となります。
  トップバンドなどでは大きくなりすぎるため、
  リッツ線を使うとよいでしょう。
  リッツ線は細いエナメル線を複数本撚り合わせることで、
  表面積を大きくとった損失の少ない高周波用の線材です。
  ローバンドはあまりやらないし、今までのアンプは
  大型のローラーインダクタでやっつけていましたので、
  自分の経験ではありませんが、トップバンドのコイルを
  2mmの線で巻いたとき、思うようにパワーがでないので、
  3mmに変更したら、20%パワーアップしたという
  リポートがあります。

■ 近接効果
  隣の巻き線が近接していると、自身が作り出す磁界で
  相手に渦電流を発生させ、お互いが一番近接している表面に
  電流が集中してしまいます。
  つまり、いくら径の大きな線材(パイプ)を使用して
  表面積を大きくとっても、電流の集中により、小さな
  表面積しか使わないというもったいないお化けが出そうな
  コイル形状なのです。
  
  スペースが限定されている場合、無理に太いパイプで
  間隔を狭く巻くくらいなら、ワンランク細いパイプを使用し、
  間隔を取ったほうがQが高い時が往々にしてあります。
  目安は、パイプ直径と同じかそれ以上の間隔です。

■ 寄生容量
  巻き線(パイプ)が太く、隣通しが近接しているほど、
  大きな寄生容量を持ちます。
  この寄生容量は損失となりますが、周波数によっては、
  容量性のリアクタンスのほうが支配的になり、大きな
  損失となります。

  表皮効果を考えると、細い線材は使えないので、巻き線の
  間隔を大きくとるか、銅やジュラアルミの平板を使い、
  隣り合う面積を小さくする必要があります。
  コリンズの大型アンプに使われている蚊取り線香型も
  寄生容量対策なのでしょうが、自作は難しそう・・・

  他、ハネカム巻きコイルやスパイダーコイルなど、
  近接する巻き線に角度をもたせて交させするなど、
  巻き方の工夫で逃げているものもありますが、
  大型アンプなどでは使用出来そうにありません。
  135KHz送信機あたりでは有効でしょう。

Qが高い条件のまとめ

線(パイプ)径が太く、巻き直径も大きくピッチが広い、
または隣接表面積が小さい。
とどのつまりQが高い空芯コイルは、物理的に大きくなくては
いけないってことですね。
また損失分は熱となるため、表面積が大きいことで大電力を
扱う際の放熱効果も見逃せません。

ちなみにいくらQの高いコイルを作っても、シールド板などが
近接していると、なんにもなりません。
コイル直径程度離れているのが理想ですが、無理なら極力
離すか、コイル径を小さくしたほうが無難です。

少し具体的な話を・・

Ep2,800V・Ip0.85Aで、fゼロ18.118MHzのおいて、Q13で 
設計した場合、インダクタンスは概ね1.4μHとなります。
これを6mmの銅パイプで直径10cm、ピッチ6mmで製作すると
3ターンちょっととなります。
配線分を考慮し3ターンちょうどとすると、コイル長は
必然的に3cmとなります。

多バンドアンプでバンド切り替えスイッチまでの配線が
どぉしても長くなり、インダクタンスを減らしたいとき、
コイル長を4cmに引き伸ばすと、コイル自体は1μHちょっと
位になります。

もしもそのまま3cm長で使用した場合、配線を含めて1.5μH
だとしたらQ12程度、1.6μHなら11.5程度となるだけで、
全く使えない値ではありません。

拙生は配線を考慮し、モノバンドであっても、最初から
単体Q15で計算したコイルを製作することで、Q13を
キープしています。
なぜなら、コイルのホット・コールドエンドを最短距離で
取り付けることは、VCに近接することとなり、また、VCの
構造や配置によっては、シャーシに近接する場合もあります。
それらを避けるためにはある程度の配線長は必要となります。
(製作中GU-74Bの6mリニアアンプは、VCが偶然影響の少ない
 構造・配置だったため、直付けです。)

直径10mmのパイプで、巻き直径10cm・ピッチ10mmで巻いた時
4μH程度なので、7MHz・プレートインピー2.2KΩのアンプで
使えそうです。
2.2KΩというのはEp4000V・Ip1Aといったところです。
( 6000V1.5Aでもいいですけど。w )

計算方法はいくらでも検索できるできますが、自由空間透磁率だの、
長岡係数だのと計算しても、具体的な物理的サイズを求めることは
なかなか困難です。
信用できそうな製作例を参考にするか、Qメータをお持ちのローカルに
おねだりするか、アンプ製作に長けているOMのアドバイスをいただくか。。
でなければ、スペックが分かっている既製品を入手する。。?、
それらが不可能な方は自分でやるしかありませんので、
可能な限り大きくピッチの広いコイルを作り、Qを稼いでおいて、
インダクタンスは既知の容量を抱かせて、ディップメータなどで測定し、
計算で出すことです。
拙生も当初はそのようにやっていました。

ちなみにQメータの原理は簡単で、測定したいコイルに直列にVCを
つなぎ、発振器から高周波を供給するだけですので、発信器さえ
クリアできれば自作可能です。
VCの両端電圧を最大になるよう調整=発振器周波数に共振させる。
直列共振回路の場合、高周波電源電圧のQ倍の電圧となるので、
その時の発振器の出力電圧とVCにかかる電圧の比がそのままQ値です。
(並列共振では電流がQ倍となります。)
SGや発振出力を取り出せるディップメータやZメータをお持ちなら
流用できるし、特定の周波数なら水晶発振子で簡単に発振器の製作が
可能です。
電圧の比をメータに反映させるのは、RFプローブかQメータを
お持ちの方にお願いして校正すれば良いでしょう。
拙生もSG流用とRFプローブで電圧を測り、Qを算出していますが、
現在は友人がQメータを持っていますので、お願いすれば楽ちんできます♪

またまたおまけ

入出力ではないのですが、プレートRFCの話です。
プレートのRFCのQについて多くは語られていない気がします。
マルチバンドで製作した場合、必要インダクタンスは10倍程度で、
ハイバンドでは問題はないでしょうが、トップバンドでは無理なので
5倍としても、トップバンドではかなりの巻き数になります。
1mmから2mmのホルマル線程度でも、すべての巻き数を一本の
ボビンに密巻きしたとしたら、寄生容量は無視できません。
寄生容量が存在すると、前述のように特定周波数において
インダクタンスが極端に下がるという現象、いわゆるホールが発生します。

対処法で一般的なのは、どぉしても一本のボビンを使用する場合、
プレート側からハイバンド用としてある程度の巻き数で間隔をあけ
徐々に低い周波数に対応するよう巻き数を増やしながら、いくつかに
分割するやりかたです。

上記の方法では効果はイマイチの場合、複数個のボビンで
分割しなくてはなりません。
その際各ボビン(タンクコイルも含む)を直交する配置とします。

最近のトレンドは、ハイバンド用をボビンに巻き更にフェライト系の
トロイダルコアでローバンド向けのRFCを挿入し、貫通Cなどで
電源に渡す方法でしょう。

拙生はマルチバンドのときはローバンドを巻いてバイパスした後に
ハイバンド用を直交させて貫通Cとの間に挿入し、最初のRFCで
ハイバンドにホールがあっても2段構えで電源への流出を
防止するのが常套手段です。

モノバンドの場合もやはり2段構えですが、使用するRFCは
両者ともそのバンドで十分なスペックを持ったものとします。
ただし形態の異なるものを使う・・・これがミソです。
例えばボビンとフェライトコア、両方ともボビンでも線材の
太さや巻き方を変えるなど、万が一片方に不具合があっても
合わせ技で何とかしよう作戦・・・ということです。

で、話したいのはボビンのことで、Qを高めようと太いボビンを
採用すると、寄生容量が増え見事なホールが現れます。
ホールと使用周波数がかけ離れていれば問題ありませんが、
細いボビンで巻くことで、寄生容量(ホール)を軽減することができます。
プレートのRFCに必要なのは、高いQよりは最低使用周波数に対する
十分なインダクタンスと、ホールがないことです。
ヒョロヒョロのボビンで巻くことをお勧めします。

インピーダンスが簡易的に測定可能な測定器が、安価で
出回っている今どきにこんなことやっている人はいないでしょうが、
昔は調整した送信機のプレートVCにパラにRFCをぶら下げてみて、
出力に変化がなければ、十分なインダクタンスで、変化したら
ホールがあるという、結構無謀な調べ方をしていました。
ホールがありホルマリの焼けた臭いが漂ったのは、圧倒的に
太いボビンでした。









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