銅パイプ組み合わせ@Qマッチ

25→50Ω変換用に使う35.355ΩのQマッチセクション。
銅パイプの組み合わせは?

どうせ来るだろうと予測はしてたので準備しておいたら
やはり質問メールが来ました。(笑

一応お教えしますが、スペーサーの材質による比誘電率や
物理的な大きさにより短縮率が発生し、インピーダンスを
下げてしまいますので、ここでは極力小さなスペーサーを
2個だけ使用し、比誘電率の影響を無視できるものとします。
つまり下記計算式に置いて頭の分数の分母は【1】です。
Zo=138.1/SQRTε**log(D/d)
よって
log(D/d)=35.355/138.1=0.256010138
となり、
D/d=10^0.256010138=1.80305983
になります。

この比になるパイプの組み合わせは、内側のパイプの外径dを
5mmとすると、外側のパイプの内径Dは
D=d*1.80305983=9.015299151
ですので、内径9mmであればOKです。
内径9mmだと、12×1.5(外径12mm肉厚1.5mm)が使えますね。
内パイプが7mmだと外パイプは15.88×1.5が良いでしょう。
ただし35.355Ωではよほど太いパイプを使わない限り、
スペースは2~2.5mmになってしまい、V・Uならともかく、
物理的に長くなるHFでは変形なども考えるとハイパワー向けでは
ないと思われます。
(430MHz50Wは実証済み。50MHz1KWは未実験)
ハイパワー使用には50→100Ωを2個作ってパラレルのほうが
安心です。
(変形などに対してであって、電気的にはインピーダンスが高い分
高電圧が発生するので、耐電力はほぼ一緒です。)

これを実現するQマッチセクションは70.710678119Ωです。
パイプの比は3.251061507となります。
内パイプに外径4mmを使い15×1や16×1.5の内径が13mmになる
パイプとの組み合わせでピッタリで、スペースは3.5mmとなります。
8mmと31.75×3組み合わせならスペースが9mm以上となり、いったい
何KWに耐えるのでしょう?(w

製作の際の注意

内パイプの外側・外パイプの内側は傷が付かないよう
柔らかなウェスなどで汚れを綺麗に拭き取っておきます。
傷でバリがある場合は耐電力が著しく低下するので要注意です。
しっかりと防水することが肝心です。
業務用には下側になる部分に水抜きの穴を開けていてものがありますが
メンテしている者から言わせると、ほとんど効果はないでしょうね。
外パイプの外側は錆ようが構いませんが、内側に水が浸透しないように

微調整

いずれにしてもスペーサーやレセクタプルへの配線の引き出し方等により、
λ/4という長さに微調整が必要になりますが、144MHz位までならあまり
神経質にならなくても大丈夫なようです。
以前430で作ったものは、テフロンシートを細くテープ上に切って
内パイプ2ヶ所に巻きつけたものをスペーサーとしましたが、
ほとんど短縮率は発生しませんでした。
28MHzでパイプのQマッチを使ったとき、試しにスペーサーに
荷物紐を適当に巻きつけてみたら、短縮率は0.97でした。

最近は便利なインピーダンスメーターが安価に出回っているので、
この辺の製作をされる方は何がしかの測定環境を持っていて、
特に説明しなくても電気的λ/4を調整できると思いますので
詳細は省きますが、最終的にはアンテナの代替に片側にダミー、
片側に終端電力計をつなぎ、実際にパワーを送り込んでみてください。
ダミーと終端電力計を交換してみて、同じパワーを表示することを
確認しておきます。
上記測定のパワーが分配器を外して終端電力計で測ったパワーの
1/2であればOKですが、損失が大きな場合は製作に問題があると
言うことになります。

【このポストのネタとなった元記事】

* 小さな回転半径でも高利得@シミュレーション

ふと新しいアイデアが浮かびましたが、はたして
逆転ホームランになるでしょうか?

例えばタワーは上げているが、設置場所の関係で回転半径が
十分にとれない方は読んで損はないかも・・・です。

回転半径が小さいということはブーム長と水平に展開する
エレメント長が短いということですが、ここでは4エレ八木と同程度の
回転半径で、いかに高利得のアンテナができるかを考えます。

同じ回転半径で八木より高利得にするには、エレメント単体でも
ゲインがなくてはいけないことは容易に想像がつきます。
単体でゲインが高いものは色々あり、例えばコーリニアアンテナ
がそうであり、これにパラスティックエレメントを付加するアイデアは
ずいぶん昔からありましたが、小さな回転半径とはなりませんね。
回転半径が小さくてもゲインが高いのはループ系でしょう。
だからと言って4エレQuadでぇ~す。なんて言うつもりはサラサラ
ありません。(笑

1980年前半あたりはHFのアンテナをいじりまくりだったのですが、
実は430Mhzのアンテナもチョコチョコ作って遊んでいました。
当時ヨンサンマルはHFの珍局出現と出先ー自宅の連絡用でしたが、
当時はヨンサンマルも結構賑わっていて、混変などによるカブリも
頻繁にあったので、自宅との連絡を水平偏波にしてみました。

モービル用で水平アンテナは自作するしかないので、ダイポール系
の他にループ系も試していたとき、2つのアンテナで失敗しました。
一つはエクスパンデッドクワッド(単エレメントのみ)。
閉回路ではないものの、その形状からループアンテナに分類される
全長2λのアンテナです。
1λループよりゲインがあると言うことで作りましたが、電圧給電の
アンテナですので給電部の処理が面倒なのと、反対側の開放端の
絶縁を疎かにし、雨の日に先端同士での放電を経験しました。
(決してハイパワーではありませんでした。正真正銘の35W機です!)

もう一つの失敗は3λループです。
2λだと電圧給電になってしまうので、電流給電とするには1λループか
3λループになります。
3λループは上下の水平エレメントがλ/2・垂直エレメントが1λで、
電流給電・上下のエレメントに流れる電流は同一方向です。
つまりλ/2ダイポールを1波長間隔のスタックにした格好です。

共振させると240Ω位だったのでuバランをつけてみましたが、
50Ωにマッチングさせるために縦長に引き伸ばした1λループより
強い電波が輻射されることはありませんでした。
形状の支持も大変でしたし、当時は多エレメント八木なら
1λのスタック間隔が必要だが、ダイポールのスタックは
λ/2以下の方がゲインがあることが実証できた、
くらいに思っていて、その後1200や2400へ移って行ったので、
カブリがなくなり垂直アンテナへ逆戻りしたため、
水平3λループはお蔵入となりました。

ではなぜ今更ステージに引っ張り出すのでしょう。
古き良き友人と当時の思いで話をしていたとき失敗を思いだし、
ふと考えついたのが多エレメント化すれば1λ間隔がかえって
活きるのではないか、また250Ω程度の入力Zも50Ωにすることが
容易ではないのかということです。

で、お馴染みのMMANAを使ってシミュレート。
試算結果は・・・・見事にハイゲインアンテナに変身を遂げて
逆転サヨナラ満塁ホームラン!と言ったところですか。(笑笑

試算条件および結果

高さは15mタワーに6mのアンテナを上げたと仮定して
下部エレメントが12m高で最適化。
中心周波数は50.05MHzとしました。
4.13m(0.69λ)のブーム長はワイドスーペスの八木程度です。

50.000MHz GAIN17.32dBi F/B26.35dB SWR1.30
50.050MHz GAIN17.34dBi F/B25.15dB SWR1.00
50.100MHz GAIN17.31dBi F/B19.27dB SWR1.35
50.125MHz GAIN17.27dBi F/B17.24dB SWR1.60

打上角は全て5.4°であります。

ゲイン重視のため、中心周波数から外れると特に高い方で
急激に性能が悪化しますが、50.1近辺にしか出ない方は50.1で、
下のCWから出る方は、50.08あたりで計算しなおせば良いでしょう。

3λ4エレメントループアンテナ形状

3λ4エレメントループアンテナ形状

3λ4エレメントループアンテナパターン

3λ4エレメントループアンテナパターン

おまけ@電波防護指針

このアンテナの90°(直下)の俯角減衰量 -3.36dBi
ダイポール比だと-5.51dBdとなり、この値をアンテナゲインとして
挿入してよいので、給電線損失をゼロとしても6.689m(反射考慮)
高さがあればOKということになります。
俯角減衰量によるアンテナゲインは最低が90°とは限りません。
このアンテナの場合63°が最低で、-12.63dBdとなり、
3mも離れていれば電波防護指針には引っかからない
ということになります。
逆のパターンもありえるので直下付近や隣家、歩道・公園など
対象になりそうな角度のところは細かく計算しておく必要があります。
ちなみにアンテナと同じ高さの建物があった場合、
このアンテナではやく40mの距離がなくてはいけません。
(条件が悪い54MHz・給電線損失ゼロで計算)
ケーブルロスが2dBあったら32m程度です。

調子コイて水平の2スタックで試算してみました。
(水平ならパラじゃねぇの?って声は無視するとして・・・笑)
スタック幅は1λではなく6m単管使用を仮定して5.8m(0.968λ)
間隔にしてみました。
単にスタック化しただけで、スタック後のオプティマイズはしていませんが
GAIN20.54dBi F/B23.42dB SWR1.19 となりました。
打上げ角は水平スタックなので変わらず5.4°であります。

本気でやるなら水平スタックの場合は、スタックブーム(水平)や
ブームステーの影響を加算した後からオプティマイズを
し直すのですが、綺麗に3dBアップすることを確認できたので
これまでとします。
八木だとこう簡単じゃぁありませんよね。@3dBup

さらに6エレ(9mブーム)にすると単体で19dBiオーバー、水平スタックでは
21dBiオーバーですので、面倒そうな6mある垂直エレメントなどの支持などに
苦労する覚悟があるのなら、十分試してみる価値はあるでしょう。

拙生はイッチョンチョンかヨンサンマルで試してから考えることにします。

余談

スタックケーブルを同軸ケーブルの組み合わせによりQマッチとするときは
アンテナの入力zを25Ωか56.25Ωとかにして計算すると楽です。
例えば50Ωのアンテナで75Ω同軸ケーブルでQマッチによるZ変換を行うと
出口は112.5となり、パラにしても56.25なのでQマッチセクション単体で
SWRは1.125となります。
アンテナの入力Zをあらかじめ56.25Ωとして設計すると、75ΩQマッチで
アウトは100Ω!パラにするのでジャスト50Ωとなるのです。
このときの75Ωケーブルはλ/4x速度係数x奇数倍でなくてはいけないので、
λ/4x速度係数がちょうど1.3m位。(短縮率0.9弱のケーブルの場合)
3/4ではちょっと足りないので5/4が良いでしょう。

追記

Qマッチについては他のところでも書いているのでサラッと流しましたが、
こんな方法もあります。
56.25Ωのアンテナに50Ωxλ/2x速度係数のケーブルを接続すると
出口は56.25Ωとなるので、(1/4のところで44.444Ωとなり、残りの1/4で
56.25Ωに戻る。)これに75Ω1/4でQマッチのほうがすっきりしているかも。
どちらが良いって?
Qマッチの場合変換するZ比が大きいほど、また使用ケーブルの短縮率が
きついほどマッチングロスは増大します。(実測による)
また電気的な長さにおいて1/4 < 3/4 < 5/4という測定結果も出ていますが、
終端に使った抵抗の両端電圧を測定して電力換算しするというあくまで
拙生流測定環境での話です。
(当然物理的に長くなったことで発生しているケーブルロスは差っ引く。)

結論として、長く引き回す部分は1/2x速度係数x整数倍の50Ωケーブル
使用の方が変換比が小さいので良いと信じています。
ケーブル自体のロスが問題になるので、SFAタイプなど低損失のものを
使用すればロスだけでなく短縮率も0.88程度となり、*D-2Vの0.67よりは
物理長が稼げるということです。(FBタイプは0.8程度)
ベストな方法は50→100Ωまたは25→50ΩになるQマッチセクションを
パイプの組み合わせなどで実現して分配器を作ってしまうか、
既製品を購入すれば悩まなくても済みますよね。

質問が来そうなので予め書いておきますが、50→100Ωは100Ωに
ステップアップしてからパラレルで50Ωに、25→50Ωは50Ωをそのまま
パラレルにして25Ωとし、それを50Ωにステップアップするということです。
上記はQマッチセクション数が2、下記は1なので拙生なら楽ちんな1個を取ります。
ちなみ25→50Ωに必要な35.355Ωになるパイプの組み合わせを見つけるのは
結構楽しいものです。
スペーサー2個で作れば短縮率はほとんど発生しない低損失なものができます。

【 Zo=138.1/SQRT(ε)*log(D/d) 】

ケーブル

入力Zを25Ωとした場合は同軸ケーブル使用のQマッチでも、全て
50Ωケーブルで処理できますが、単体ループで250Ωのアンテナなので、
25Ωまで下げるのはキツいと思われ、ここでは採用できませんが
八木系のアンテナでは便利でしょう。
50Ωのλ/4x速度係数x奇数倍は25Ωを100Ωにステップアップします。
Qマッチセクションが長くなるのが嫌な(1/4しか使いたくない)方は
50Ωをパラにして25Ωとした任意長ケーブル(もちろん同一長)で
50Ωのλ/4Qマッチセクションにつなぎ込めばOKです。
コネクタ使用が難しくなりハンダ付けとなりますが、その処理さえ
ちゃんとやれば、パラにすることでハイパワーにも耐えてくれるでしょう。

追記

表皮効果による損失の比較

d/D=0.2785が一番損失が少ない比ですが、D/dの逆数なので
計算すると3.590664273となるので、70.7ΩのQマッチセクション
のほうがこの比に近いため損失が少ないのが分かります。

HOME