あまり考えたくはないのですが・・・

皆さんもきっと、できれば避けて通りたいと思いますが、
スプリアス(不要輻射)について触りだけ。

最近IMDという文字が目に飛び込んでくるようになったのは理由があります。
無線設備のスプリアス発射の強度の許容値に係る技術基準の改正が何年前
だったかにありました。
WRC(世界無線通信会議)で決定し、これに基づき国内法も追従しました。

で、ハッキリ言って厳しくなったのね。^^;;
なにが厳しくなったかというと、


従来のスプリアス発射以外に送信機雑音などの
帯域外発射も含めた不要発射全体の許容値を
規定すること。

これなのですよ。

高調波は従来から規定がありましたが、帯域外発射ってのがIMDに
関係してくるのですね。
で、帯域外発射って何かというと、


適用する周波数範囲として、中心周波数から
必要周波数帯幅の±250%離れた周波数を境界に、
必要周波数帯の外側からこの境界までを帯域外領域、
それより外側をスプリアス領域とすること。

つまりアンプの非直線部分で発生する、相互変調歪などがこれに
当たるいうことになります。

で、30MHz以下で50Wを超えるものの帯域外領域におけるスプリアス
発射の強度の許容値は、


50mW(船舶局及び船舶において使用する携帯局の
送信設備にあつては、200mW)以下であり、かつ、
基本周波数の平均電力より40dB低い値。
ただし、単側波帯を使用する固定局及び陸上局
(海岸局を除く。)の送信設備にあつては、
50dB低い値。


スプリアス領域における不要発射の強度の許容値は、
基本周波数の搬送波電力より60dB低い値。

となります。

さらに50MHzで50Wを超える帯域外領域におけるスプリアス発射の
強度の許容値は、


1mW以下であり、かつ、基本周波数の平均電力より
60dB低い値。


スプリアス領域における不要発射の強度の許容値は、
50μW以下又は基本周波数の搬送波電力より
70dB低い値。

です。

HFで1KWのSSBを考えてみます。


単側波帯は-50dB
ですから、電力で言うと10mWとなります。
また高調波成分は-60dBだと1mWまでですね、
高調波の-60dBは技術的に困難ではありませんが、帯域外領域における
スプリアスの-50dBは結構難しいかも。
IMD特性のすぐれたディバイスを軽く使うしかないでしょう。
エキサイタにしても古い無線機は条件を満たしていないと思われ、
100W機と称するものを、10Wくらいで使えば何とかなる?

50MHzではさらに厳しくなり、帯域外発射は-60dBです。
1KWに対し-60dBで1mWですから、
500Wだと-60dBは500μWとなり、
1KW以上の無線設備でないと、1mW以下というのは関係なさそうです。
また、高調波は50μW以下または-70dB以下です。
500Wの-70dBがジャスト50μWですから、
1KWの免許を取得するときは、-73dB以下
となり、これはもう虐めじゃないのかなぁ。w

高調波は定K型LPFを多段にすれば、何とか稼げる値ですが、
帯域外領域におけるスプリアスってやつは自作派にとっては厄介ですね。
最近A級増幅を使った低歪送信機が出回っているのも、このせいでしょう。

これらの数値により考察すると、落とし穴にも書いたように、
格安だからとMRF255に手は出せなくなっちゃいますね。

結論

AB1級で2~3KW出る真空管リニアアンプのバイアスを浅くして、
A級動作に近く(またはA級に)して、アイドリングをジャンジャン流し、
軽く押して500Wで使うのがお洒落でしょうか。

【 追記 新スプリアス基準@北海道総通の見解 】

昨年の9月ごろに俯角減衰量をシミュレーター使用での
計算による算出について、総合通信局無線通信部陸上課の
担当者に電話で問い合わせた際、算出根拠について事前
審査していただけるということで、12/29投稿にある
https://oba-q.com/files/denpa.xlsx
の完成形を提出させていただきました。

提出後かなりの時間が経過し、途中検討に時間がかかる
という電話でのお話をいただきましたが、別件(クラブの局免を
直接受け取る)でお伺いしたところ、担当者様とお話し
することができ、基本的に提出した算出根拠で問題ない
というお墨付きをいただいた経緯があります。

その時に時間が取れるということなので、新しいスプリアス
基準(関連記事 https://oba-q.com/?page_id=218)に出現した
帯域外発射についてもお話してきました。
内容は新スプリアス基準に適合したエキサイタの後につける
リニアアンプについてです。

拙生の知りたかったことは、リニアアンプ使用の際に、どのような
測定をすれば新基準に適合していると判断されるのかということ
だったのですが、いただいた回答は拍子抜けするほど簡単な物でした。

技適機種などで新基準に適合しているものをエキサイタとし、
リニアアンプを付加した場合、アンプの形式などに関わりなく、
基準を満たしているものとみなす・・・・

拙生としては新基準を満たすには、3極管のAB2級やB級アンプでは
いくらRF的なNFBをかけても難しいだろうから、4極管のA級または
限りなくA級に近いAB1級で、しかも軽く使っても1KW出力が可能な
余裕のあるもの・・・などと考えていましたが取り越し苦労でした。

どうやら新基準に関する規定は過渡期にあるようで、将来的には
アンプを付加したときの測定基準なども規定される可能性はあるかも
知れないということですが、現時点においては(ぶっちゃけた話)
アマチュアにそこまで求めるのは酷だろうというのが、担当者様の
ご意見であり、どうやろしばらくは3-500Zx2などでも問題ないと
言うことのようであります。
確かに何百万円もかかるであろう帯域内外の測定環境を
自前で構築できるアマチュアは少ないでしょうね。

1KW免許を取得しようとされている方で、同様な疑問をお持ちの方に
参考になればと思い、思い出したので書いておきます。

なお、上記のお話は北海道総通においてであって、他エリアの総通では
違う見解があるかもしれません。

参考資料
http://www.tele.soumu.go.jp/resource/j/others/spurious/files/sanko002.pdf

 
 









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