リレーの落とし穴

リグ単体でもなるときがありますが、リニアアンプを
使用していると結構な頻度で、受信感度がアッテネータを
カマシテいるがごとく低下していることがあります。
一度送信をすると通常の感度に戻るときもあります。
もちろんこれは、粗方がアンテナや送受切り替えリレーの
接触の問題であります。
アンテナ(特にエレメントとマッチング回路、給電線の
繋ぎこみ部分)の接触面でも起きることがありますが、
ここではリレーに絞ります。

リニアアンプを自作する際、送受切り替えに使用する
リレーを選択するときに、接点の許容電力・許容電圧、
および許容電流等の最大値は気にしても、最小適用負荷を
気にされる方はそう多くありません。

大電流時には気にならなかった要素が、受信時の微小電流
を扱うときには、大きな問題となります。
微小負荷レベルで障害となる要素は、接触バネの導体抵抗・
接点の接触抵抗であり、これらは温度などの外的環境や
開閉頻度などで変化します。

やっかいなのは、送信時は接点の接触面は大きくなくては
いけないのに対し、上記現象は接触面が大きいほど起こり
やすく、送受切り替えという役目を担うリレーは、送信時の
容量を確保することは必須なので、受信時に接触不良と
なってしまうことが多いということです。
逆に、微小電流を扱えるAg-Pd合金使用の接点は、大電流は
流せませんし、基板用の小型リレーなどももちろん無理です。
Ab-Pd接点を持つリレーは、標準接点側でもせいぜい2A程度
しか流せるものしか拙生は知りません。

大電力を扱うと、メーク時に火花がでたりして、
付着したカーボンなどの汚れを吹き飛ばしてくれる効果も
期待できるのですが、受信時の微小負荷レベルでは、
ほんの些細な接触不良でも障害となります。
できればバキュームリレーなどを使って回避したいところですが、
高価です。(これが一番の問題)
手持ちのリレーを使って、上記現象が頻繁に起きる場合は、
送信は大型リレーのNO接点のみを使用し、受信は微小電流を
扱える別リレーを用い、NC接点で入出力をショートしておくと
よいでしょう。
ただし、送信でオープンになったときの耐圧からみて、
Ag-Pdのリレーなどは使えますが、基板用など小型の
リレーはNGです。
接点がとんがっていて接触面が小さく、オープン時の接点間
耐圧が十分であれば、受信時の不具合は格段に減ります。

受信時の電流算出

まずは0dBm(=1mW)50Ω系の送信設備から輻射すると、
113dBμV(ケーブル損失、アンテナゲインは考慮しない)
になると覚えましょう。
E=SQRT(P*R)←ルートPRのこと
(数式エディタを立ち上げるのが面倒。。。)
で計算すると、0dBm = 107dBμなのですが、
開放では6dBアップとなります。
  107dBμPD = 113dBμEMF
逆に113dBμを50Ω系の設備で受信すると、入力電力は
1mW(=0dBm)となります。
(ちなみに75Ω系では0dBm→約115dBμで約2dBアップ)

113dBμは非常に強力な電波ですので、60dBμを例に
考えてみます。
60dBμも十分強力な電圧ですけど。

60dBμ(開放)= -53dBm(50Ω終端)

つまり60dBμの開放電圧を50Ω系の受信設備で終端した場合、
入力電力は1mWより-53dB落ちで、0.005μW入力となります。
このときの電圧は0.5mVで、電流は10μAです。

59+20dBの強力な電波でこんなものですから、弱い電波では、
もっともっと微小な電流です。
S1(-8dBμ)だと、0.2μV・0.00398μA・・・・
バンドによってはノイズレベル以下かもしれませんが。

(最近のSメータはS1個3dBステップらしいが、S9を40dBμ
 6dBステップとして算出。ま、Sメータはあくまで目安です。
 一応3dBステップでS1を計算すると、16dBμ(開放)となり、
 50Ω終端は0.2*10^-12W・3.16μV・0.0632μAとなります。)

Excelでの計算例

dBμ(開放)→ W(50Ω終端)
=(10^((16-113)/10))/1000

計算結果 2*10^-13

その時の端子電圧(μV)
=SQRT((2*10^-13)*50)*10^6

その時の電流
=SQRT((2*10^-13)/50)*10^6

電圧値と電流値を掛け合わせて電力値と相違ないことで
検算ができます。

dBμVはあくまで開放電圧であります。
終端した際の端子電圧をdBμで表すときはdBμPDなどとし、
単にdBμと表記した場合はdBμEMFを指します。

もちろんSGやスペアナのdBμV表示も開放電圧です。
例えば50Ω出しのSGを50Ωの受信機で終端すると、電圧が
半分になりますが、表示はあくまで半分になる前の値ですから、
各計算において6dBの足し引きが必要になるときもあるので、
注意しなければなりません。
自由空間損失の計算時などでも、50Ω系から出力された
10W(40dBm)は、損失・利得ともゼロとすると、153dBμ
(113+40)となります。
ここから距離や周波数による減衰や土地係数などを加えて
算出します。(計算方法は2通りある@余談)

この辺を間違った記述が多数散見できますので、
あえて終端だの開放だのとしつこく書きました。

送信時に6足して受信時に6引くのなら関係なくねぇ?
って声が聞こえてきそうです。。。
送受とも50Ω系で統一されているなら、求めるものによっては
そのとおりでありますが、テレビ放送などのように、
送信系・受信系が統一されているとは限りませんよね。

dBμVがdBμになっているのは、業務屋の悪い癖で、
単にフルネームは面倒だからです。
さらに話すときはデシベルマイクロではなく、デービー
マイクロが飛び交います。(笑

サービス

上記の計算が出来るExcelファイルは →dB換算← からダウンロードできます。
ついでに自由空間損失もサービスしちゃいましょ。 →自由空間損失←

Excelはマクロを有効にするため、セキュリティを中にしてください。
誓っておかしなものは忍ばせておりませぬ。

 
 









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