アラカルト

AB1級の小さな真空管リニアアンプの製作を始めたことから
久方ぶりに同好の士のホームページなどを閲覧。
頑張ってらっしゃる方の自慢の作品を眺めて、拙生も!と
奮い立たせるつもりだったのですが、いくつか気になった
ところがあり、余計なページを作ることに。。。

EsgやEcgの安定化にシリーズレギュレータ??

製作者にはそれぞれのポリシーがあることは理解できますが、
Esgはともかく、Ecgのシリーズレギュレータはどぉなんでしょう。
使用ディバイスがコケてしまったときの想定をした工夫がないと、
Ecgが掛からないで、Epがラッシュする可能性大なのでは?
(Esgが掛からないと、まともにパワーが出ないだけですけど。)

拙生は最初からシャントレギュレーターを使用しています。
もちろん7F71のようにSG電流が非常に小さな球では、
SG用レギュレータまでは必要なく、大目のブリードで十分でしたが、
Ecgはアイドリング電流の設定も楽チンなので、電圧可変ができる
シャントレギュレータを採用していました。


      実際に使用した回路は頭がPNPトランジスタでした。

この回路は受信時はR1をジャンパーし、整流電圧がもろ掛かります。
送信時はR1が安全抵抗となり、シャントレギュレータが活きます。
送受切り替え時にリレーの両切片が、一瞬オープンになる時も、
R1を通してEcg切れることはありません。
またこのレギュレータのどのデバイスがコケても、バイアスが
なくなることはありせん

安定性と無効電力においてシリーズ型に劣るものの、目的から言えば、
文句ない安定度ですし、全体の消費電力を考えれば、無効電力の
大小を考慮する必要はないでしょう。(笑

なおEsgのレギュレータは適当なディバイスさえあれば極性が
反転するだけです。

順番 (あまり触れられていないようなので。)

 □ 送受切り替えリレーの順番
  
   特に入出力のリレーを別物にした場合、一般的に入力側が小さく
   出力側が大きいのが通常です。
   これらを同時に叩くと、小型の入力側が先にメークするため、
   一瞬ですが出力側が無負荷状態で送信することになります。
   CWでのブレークイン送信で弱い球ならコケることもあります。
   SSBでもボイスコントロールなどでプレスを掛けると同様です。
   同時メークが理想ですが、それが叶わない場合は、必ず出力側から
   メーク
させ、入力側を後にします。
   ただしこうすると今度はエキサイターの出力が一瞬無負荷になるので、
   ALCが働きパワーが制限され、次第に増加してくる現象が発生しますが、
   アンプの球がコケるよりは遥かにましですよね。
   増加するスピードは、ALC回路の持つ時定数によります。

   拙生は足踏みスイッチ使用が好きです。
   CWでもSSBでも、踏んでからパワーを出すまでに、意識することなく
   丁度良いタイムラグが発生してくれるからです。
    

   
 □ 電極への電圧印加

   フィラメントを熱し始めてからEpは何分後とか規格がある場合は
   勿論のこと、そうでない場合も電圧印加の順番が存在します。
   最低でも以下は厳守です。
   1 ファン・フィラメント・Ecg
   2 Ep・Esg・送受切り替えcnt
   EcgなしにEp・Esgの印加は厳禁ですし、各電極の電圧印加が
   行われないうちにドライブを掛けるのも当然いけません。

   では電源オフのときはどうでしょう。
   通常Ep・Esg回路には何がしかのブリーダ抵抗が入っていて、
   平滑コンの残り電圧はEcgよりも早くディスチャージしますので
   通常なら大丈夫です。
   手持ちの部品定数などにより、Ecgの電圧の落ちが早い場合は、
   ブリーダ抵抗ががあれば大きな値に変更したり、大きめの
   容量の電解コンをぶら下げて、ディスチャージを遅らせるのも
   一つの手でしょう。
    
   なおSGにEcgのマイナス電圧などを流用して切り替えることで
   スタンバイとしている場合はEsgは1番目でもかまいません。
   この方式を採用すると、適当な2次巻き線があれば、
   ひとつのトランス済ますことができ、
   コストやスペースファクタにとって大きなメリットです。
   またメイン電源SWと別回路にして、OFF後もファンを回して、
   余熱を排気することも、球の延命に寄与します。
   Off Delay のリレーがジャンク屋にあったら、サッサと入手
   しておきましょう。

EsgEcg

   このへんのシーケンスをあれこれ考えるのも、アンプ製作の大きな
   楽しみの一つですが、懲りすぎると不具合の確率は大となります。
   シンプルイズザベストで、最低限の手当てをしておきましょう。     

 TL-922について

拙生が新品で購入した唯一のメーカ製リニアアンプです。
1980年代前半の古~い話ですが。


トラブルの続出で、メーカに詳細なレポート(半ば脅し!?^^;;)すると
開発部隊が改良部品を持ってきて、無料交換してくれましたが、その後も
トラブル続きで嫌気がさし、ついに手放してしまいました。

現在ではほとんどがHP上で閲覧でき、対応策も掲載されていますが、
いくつかのトラブルは見当たらないので、書いておきます。
たぶんメーカも改良したはずなので、初期に販売されたものをそのまま
使用されているケースにしか当てはまらないかもしれませんが。

 □ 入力回路のシールド

   ある日15mでDXを呼ぶと、「パチン・パチン」という異音が・・・
   製作中のBPF調整のために使用していたディップメータ+Zメータの
   コイルが偶然TL-922の下にもぐりこんだ形になっていて、
   21MHz近辺に同調させていたわけですが、ディップメータのメータが
   送信するたびに振り切って、パチンという音がしていたのです。
   筐体から漏れているんですね。
   ひっくり返してみると、入力回路が収まっている近辺の足を避けるように
   裏蓋がUの字に切り抜いてあり、入力回路の部分が
   見えているではありませんか。   
   試しに銅板で穴を塞いでみると、メータは若干振れるもの
   振り切れることはなくなり、側に置いていたTVIモニター用の
   テレビ画面の乱れも、かなり軽減されました。
   つまり出力側からの障害ではなく、ドライブしただけでTVI
   出ていたということになります。
   後日メーカがUの字の穴のない底板と交換してくれました。

 □ 側板の接触
   
   上記の現象を確かめる際に、ディップメータをや自作簡易電測計を
   振り回し調べた結果、程度の大小はあっても、あちこちから漏れ
   が発覚しました。
   特に側板あたりがひどいのでバラシてみたところ、接触部分に塗装
   施したまま、数本のネジで止めてあるだけだったので、思い切って塗装を
   サンドペーパーで剥がしてみたのですが、見事漏れは半減しました。

   その昔製作の先生であった先輩に、送信機を作るときは、シールド板は
   3cm程度でネジ止めしなさい。という言葉からはかけ離れた構造で
   ありましたが、側板に多くの穴を開ける勇気はありませんでした。
   後日メーカが接触面の塗装ない新たな側板と交換してくれました。
 

  
 この対策を行った後もTVIが収まらず、スペアナでの波形観測で
 3極管ベタコンアースB級アンプの限界を痛感し、手放して
 しまいましたので、以降の事例は、使用している方に頼まれて
 対応したトラブルです。

 □ フィラメント

    922をコンテストで使っていたら、パワーが半分以下に減少し、
    焦げ臭い匂いがしてきたという例。

    裏蓋を開けると、溶けた半田カスがポロリ。
    どこが溶けたんじゃ?と目を凝らすと、3-500Zフィラメントの
    ピン部分からでした。
    半田が溶けリード線がピンの内部で浮いた状態でした。
    ここで疑問に思ったのは、922のフィラメントは2本シリーズなのに、
    1本だけ稼動したということです。
    そこで回路図を眺めると、ドライブ供給用のRFチョークが、2本の
    フィラメントの間に入っていますが、チョークのコールドエンド側は、
    フィラメントのトランスの中間タップまでのびていて、
    1本が死んだときの還流路となるため、活きているほうに5Vが掛かる
    仕組み
になっています。
    よく考えているといいたいところですが、これを目的として
    設計されてはいない
のは明らかです。
    フィラメント電流を流すには巻き線が細すぎ、それが証拠に1本で
    しばらく稼動させた結果として焦げていました
    これが焦げ臭かった原因と考えられます。
    (NFB用のRFC&コンデンサのいくつかもぶっ飛んでましたので、
     これも匂いの原因かもしれません。)
    半田が溶けた理由は簡単です。
    922は空冷にアキシャルファンで吸い出ししていますが、初期のものは
    ソケット周りの空冷はまったくといって考慮されていません。
    対策として高い足を使い筐体を浮かし、下側にもアキシャルファン
    取り付けて底板にメッシュ状の穴をあけ、風を送り込んでソケット周りも
    冷やしてやることで、48時間フル運用も耐えてくれるようになりました。
    
    別対策として回路を変更し、1本死んだときに活きているもう1本に
    還流しないよう、RFCのコールドエンドをトランスの中間タップに
    接続しない
方法もやってみました。
    1本死んだらまったく使えなくなりますが、それが当たり前です。
    もし1本だけでも活かしたいなら、15Aに耐えられるRFCに交換
    することですが、出力Zなど設計値から大きく外れることに
    なるので、試しただけで実用としたことはありません。
    改造は一定程度以上の知識がないと難しいので、プレート・グリッド
    電流の還流と入力ドライブのアイソレーションが理解できる方だけに
    お勧めします。
    それが理解できる方は、自力で設計施工ができるでしょうから、あえて
    やり方は書きません。
    逆に知識がある方は、出力Zのことなどを考えると、そんな真似は
    しないと思いますけど。

    後日メーカではソケットを少し沈めてシャーシとの間に隙間を作り、
    風をまわすようにしたということでしたが、それもコンテストでの
    48時間フル稼働では 意味がなかった
というリポートを何件か
    いただいています。
    アキシャルファンを別途用意した5件に関しては、不具合は発生
    しておりません。

余談

ずいぶん昔の話ですが、N●Kのラジオ放送(教育)の
終段交換の仕事をしたことがあります。
9Fxxxの2パラで250KWを絞り出し、AM変調を掛けます。
それが2セットあり、出力側で合成し500KWとします。
なんでそんなことするの?っていうと。。。
1セットが障害やメンテナンス時に止まっても、
もう一方のセットで放送は続けられるという仕組みです。
3dB落ちですから、サービスエリアが極端に狭まるような
ことはありませんし、品質もそんなに落ちないでしょう。

もし2本のうちの1本がコケたとき、もう一本で運用
できるようにするためには、参考になるでしょう。
なんて仰仰しいこと書きましたが、半導体アンプでは
当り前に使われていますよね。

 
 
 
 □ 160mでチューニングできない
    ダミーではチューニングするものの、ロードVCの容量がぎり
    実際のアンテナを接続されたときに、多少の純インピーダンスのズレや
    リアクタンス成分があって、容量が大きい所でチューニングが取れる時
    ロードVCを目いっぱい入れてもNGとなります。
    対策として160m用の固定コンデンサを足し増ししてみましたが、
    チューニングは取れるようになったものの、強風などでワイヤー
    アンテナのエレメントが大きく振れると、時折ロードVCから火花が
    出たりしたので、どぉしても使いたいならアンテナチューナーを使用し
    緩衝材とする
ことで逃げるよう、アドバイスしておきました。
    160mなら以前40KG65本で作ったアンプのほうが、922より幾分か
    パワーが出てくれたので、勉強の意味で製作も勧めておきました。
    おまけ付きグリコよろしく、922の160mは付いてるだけって
    ところではないでしょうか。
    
ほか、文中にもありますが、NFB用RFC・コンデンサの問題や、
フィラメント配線の順番、PSの抵抗交換(コイル自体も巻きなおし)、
などはあちこちに掲載されているので割愛します。

書き忘れですが、ハイバンドで入力側の反射が大きく(VSWR>2)、
定数を変更して調整しなおしもやったことがあります。
その際遊び半分でやったことで思わぬ結果となったことを
記憶しています。
28MHzにおいて入力側を測ると100Ω以上(定数をいじっている最中)
だったので、50Ωの無誘導抵抗をシリーズで100Ωとしパラってみました。
当然押しのパワーは2倍程度必要でしたが、エキサイターからみた
SWRが改善されただけでなく、スペアナでの波形に
クリップが減少し、2nd・3rdハーモニクスも原型より15dB以上改善
されて、
びっくりしたことを覚えています。
B級ですから半サイクルしかドライブしないので、逆相の
半サイクルはオープン状態で、いわゆるスイッチング=歪発生器
だったのでしょう。
かなり適当なお遊びで、しかも意図していなかったことでしたが、
きっとクランプ管などで逆相半サイクル時に何がしかの負荷を
与えるのと同じ効果があったのでしょう。

ただしクランプ管を採用したのと違うのは、最初の半サイクル時に
クランプ管はオープン状態で、リニアアンプの入力Zそのものが
エキサイターの負荷となり、逆相の半サイクルでクランプ管のみが
負荷となりますが、無誘導抵抗の場合は最初の半サイクルが入力Zに
パラレルとして入り込みますので、その分押しは必要になり、また
次の半サイクルは、無誘導抵抗のみが負荷となります。
半サイクルごとの負荷が50Ωと100Ωと変動するので、好ましい
状態ではありませんが、100Ωとオープンと比較すればずっとマシで、
このくらいはタンク回路のフライホイール効果で吸収できる
範囲であると思われます。

思い出したらポチポチ書き増して行きます。









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