AB1級の小さな真空管リニアアンプの製作を始めたことから
久方ぶりに同好の士のホームページなどを閲覧。
頑張ってらっしゃる方の自慢の作品を眺めて、拙生も!と
奮い立たせるつもりだったのですが、いくつか気になった
ところがあり、余計なページを作ることに。。。
■EsgやEcgの安定化にシリーズレギュレータ??
製作者にはそれぞれのポリシーがあることは理解できますが、
Esgはともかく、Ecgのシリーズレギュレータはどぉなんでしょう。
使用ディバイスがコケてしまったときの想定をした工夫がないと、
Ecgが掛からないで、Epがラッシュする可能性大なのでは?
(Esgが掛からないと、まともにパワーが出ないだけですけど。)
拙生は最初からシャントレギュレーターを使用しています。
もちろん7F71のようにSG電流が非常に小さな球では、
SG用レギュレータまでは必要なく、大目のブリードで十分でしたが、
Ecgはアイドリング電流の設定も楽チンなので、電圧可変ができる
シャントレギュレータを採用していました。
この回路は受信時はR1をジャンパーし、整流電圧がもろ掛かります。
送信時はR1が安全抵抗となり、シャントレギュレータが活きます。
送受切り替え時にリレーの両切片が、一瞬オープンになる時も、
R1を通してEcg切れることはありません。
またこのレギュレータのどのデバイスがコケても、バイアスが
なくなることはありせん。
安定性と無効電力においてシリーズ型に劣るものの、目的から言えば、
文句ない安定度ですし、全体の消費電力を考えれば、無効電力の
大小を考慮する必要はないでしょう。(笑
なおEsgのレギュレータは適当なディバイスさえあれば極性が
反転するだけです。
■順番 (あまり触れられていないようなので。)
□ 送受切り替えリレーの順番
特に入出力のリレーを別物にした場合、一般的に入力側が小さく
出力側が大きいのが通常です。
これらを同時に叩くと、小型の入力側が先にメークするため、
一瞬ですが出力側が無負荷状態で送信することになります。
CWでのブレークイン送信で弱い球ならコケることもあります。
SSBでもボイスコントロールなどでプレスを掛けると同様です。
同時メークが理想ですが、それが叶わない場合は、必ず出力側から
メークさせ、入力側を後にします。
ただしこうすると今度はエキサイターの出力が一瞬無負荷になるので、
ALCが働きパワーが制限され、次第に増加してくる現象が発生しますが、
アンプの球がコケるよりは遥かにましですよね。
増加するスピードは、ALC回路の持つ時定数によります。
拙生は足踏みスイッチ使用が好きです。
CWでもSSBでも、踏んでからパワーを出すまでに、意識することなく
丁度良いタイムラグが発生してくれるからです。
□ 電極への電圧印加
フィラメントを熱し始めてからEpは何分後とか規格がある場合は
勿論のこと、そうでない場合も電圧印加の順番が存在します。
最低でも以下は厳守です。
1 ファン・フィラメント・Ecg
2 Ep・Esg・送受切り替えcnt
EcgなしにEp・Esgの印加は厳禁ですし、各電極の電圧印加が
行われないうちにドライブを掛けるのも当然いけません。
では電源オフのときはどうでしょう。
通常Ep・Esg回路には何がしかのブリーダ抵抗が入っていて、
平滑コンの残り電圧はEcgよりも早くディスチャージしますので
通常なら大丈夫です。
手持ちの部品定数などにより、Ecgの電圧の落ちが早い場合は、
ブリーダ抵抗ががあれば大きな値に変更したり、大きめの
容量の電解コンをぶら下げて、ディスチャージを遅らせるのも
一つの手でしょう。
なおSGにEcgのマイナス電圧などを流用して切り替えることで
スタンバイとしている場合はEsgは1番目でもかまいません。
この方式を採用すると、適当な2次巻き線があれば、
ひとつのトランス済ますことができ、
コストやスペースファクタにとって大きなメリットです。
またメイン電源SWと別回路にして、OFF後もファンを回して、
余熱を排気することも、球の延命に寄与します。
Off Delay のリレーがジャンク屋にあったら、サッサと入手
しておきましょう。
このへんのシーケンスをあれこれ考えるのも、アンプ製作の大きな
楽しみの一つですが、懲りすぎると不具合の確率は大となります。
シンプルイズザベストで、最低限の手当てをしておきましょう。
■ TL-922について
拙生が新品で購入した唯一のメーカ製リニアアンプです。
1980年代前半の古~い話ですが。
トラブルの続出で、メーカに詳細なレポート(半ば脅し!?^^;;)すると
開発部隊が改良部品を持ってきて、無料交換してくれましたが、その後も
トラブル続きで嫌気がさし、ついに手放してしまいました。
現在ではほとんどがHP上で閲覧でき、対応策も掲載されていますが、
いくつかのトラブルは見当たらないので、書いておきます。
たぶんメーカも改良したはずなので、初期に販売されたものをそのまま
使用されているケースにしか当てはまらないかもしれませんが。
□ 入力回路のシールド
ある日15mでDXを呼ぶと、「パチン・パチン」という異音が・・・
製作中のBPF調整のために使用していたディップメータ+Zメータの
コイルが偶然TL-922の下にもぐりこんだ形になっていて、
21MHz近辺に同調させていたわけですが、ディップメータのメータが
送信するたびに振り切って、パチンという音がしていたのです。
筐体から漏れているんですね。
ひっくり返してみると、入力回路が収まっている近辺の足を避けるように
裏蓋がUの字に切り抜いてあり、入力回路の部分が
見えているではありませんか。
試しに銅板で穴を塞いでみると、メータは若干振れるもの
振り切れることはなくなり、側に置いていたTVIモニター用の
テレビ画面の乱れも、かなり軽減されました。
つまり出力側からの障害ではなく、ドライブしただけでTVIが
出ていたということになります。
後日メーカがUの字の穴のない底板と交換してくれました。
□ 側板の接触
上記の現象を確かめる際に、ディップメータをや自作簡易電測計を
振り回し調べた結果、程度の大小はあっても、あちこちから漏れ
が発覚しました。
特に側板あたりがひどいのでバラシてみたところ、接触部分に塗装が
施したまま、数本のネジで止めてあるだけだったので、思い切って塗装を
サンドペーパーで剥がしてみたのですが、見事漏れは半減しました。
その昔製作の先生であった先輩に、送信機を作るときは、シールド板は
3cm程度でネジ止めしなさい。という言葉からはかけ離れた構造で
ありましたが、側板に多くの穴を開ける勇気はありませんでした。
後日メーカが接触面の塗装ない新たな側板と交換してくれました。
この対策を行った後もTVIが収まらず、スペアナでの波形観測で
3極管ベタコンアースB級アンプの限界を痛感し、手放して
しまいましたので、以降の事例は、使用している方に頼まれて
対応したトラブルです。
□ フィラメント
922をコンテストで使っていたら、パワーが半分以下に減少し、
焦げ臭い匂いがしてきたという例。
裏蓋を開けると、溶けた半田カスがポロリ。
どこが溶けたんじゃ?と目を凝らすと、3-500Zフィラメントの
ピン部分からでした。
半田が溶けリード線がピンの内部で浮いた状態でした。
ここで疑問に思ったのは、922のフィラメントは2本シリーズなのに、
1本だけ稼動したということです。
そこで回路図を眺めると、ドライブ供給用のRFチョークが、2本の
フィラメントの間に入っていますが、チョークのコールドエンド側は、
フィラメントのトランスの中間タップまでのびていて、
1本が死んだときの還流路となるため、活きているほうに5Vが掛かる
仕組みになっています。
よく考えているといいたいところですが、これを目的として
設計されてはいないのは明らかです。
フィラメント電流を流すには巻き線が細すぎ、それが証拠に1本で
しばらく稼動させた結果として焦げていました。
これが焦げ臭かった原因と考えられます。
(NFB用のRFC&コンデンサのいくつかもぶっ飛んでましたので、
これも匂いの原因かもしれません。)
半田が溶けた理由は簡単です。
922は空冷にアキシャルファンで吸い出ししていますが、初期のものは
ソケット周りの空冷はまったくといって考慮されていません。
対策として高い足を使い筐体を浮かし、下側にもアキシャルファンを
取り付けて底板にメッシュ状の穴をあけ、風を送り込んでソケット周りも
冷やしてやることで、48時間フル運用も耐えてくれるようになりました。
別対策として回路を変更し、1本死んだときに活きているもう1本に
還流しないよう、RFCのコールドエンドをトランスの中間タップに
接続しない方法もやってみました。
1本死んだらまったく使えなくなりますが、それが当たり前です。
もし1本だけでも活かしたいなら、15Aに耐えられるRFCに交換
することですが、出力Zなど設計値から大きく外れることに
なるので、試しただけで実用としたことはありません。
改造は一定程度以上の知識がないと難しいので、プレート・グリッド
電流の還流と入力ドライブのアイソレーションが理解できる方だけに
お勧めします。
それが理解できる方は、自力で設計施工ができるでしょうから、あえて
やり方は書きません。
逆に知識がある方は、出力Zのことなどを考えると、そんな真似は
しないと思いますけど。
後日メーカではソケットを少し沈めてシャーシとの間に隙間を作り、
風をまわすようにしたということでしたが、それもコンテストでの
48時間フル稼働では 意味がなかったというリポートを何件か
いただいています。
アキシャルファンを別途用意した5件に関しては、不具合は発生
しておりません。
余談
ずいぶん昔の話ですが、N●Kのラジオ放送(教育)の
終段交換の仕事をしたことがあります。
9Fxxxの2パラで250KWを絞り出し、AM変調を掛けます。
それが2セットあり、出力側で合成し500KWとします。
なんでそんなことするの?っていうと。。。
1セットが障害やメンテナンス時に止まっても、
もう一方のセットで放送は続けられるという仕組みです。
3dB落ちですから、サービスエリアが極端に狭まるような
ことはありませんし、品質もそんなに落ちないでしょう。
もし2本のうちの1本がコケたとき、もう一本で運用
できるようにするためには、参考になるでしょう。
なんて仰仰しいこと書きましたが、半導体アンプでは
当り前に使われていますよね。
□ 160mでチューニングできない
ダミーではチューニングするものの、ロードVCの容量がぎりで
実際のアンテナを接続されたときに、多少の純インピーダンスのズレや
リアクタンス成分があって、容量が大きい所でチューニングが取れる時
ロードVCを目いっぱい入れてもNGとなります。
対策として160m用の固定コンデンサを足し増ししてみましたが、
チューニングは取れるようになったものの、強風などでワイヤー
アンテナのエレメントが大きく振れると、時折ロードVCから火花が
出たりしたので、どぉしても使いたいならアンテナチューナーを使用し
緩衝材とすることで逃げるよう、アドバイスしておきました。
160mなら以前40KG65本で作ったアンプのほうが、922より幾分か
パワーが出てくれたので、勉強の意味で製作も勧めておきました。
おまけ付きグリコよろしく、922の160mは付いてるだけって
ところではないでしょうか。
ほか、文中にもありますが、NFB用RFC・コンデンサの問題や、
フィラメント配線の順番、PSの抵抗交換(コイル自体も巻きなおし)、
などはあちこちに掲載されているので割愛します。
書き忘れですが、ハイバンドで入力側の反射が大きく(VSWR>2)、
定数を変更して調整しなおしもやったことがあります。
その際遊び半分でやったことで思わぬ結果となったことを
記憶しています。
28MHzにおいて入力側を測ると100Ω以上(定数をいじっている最中)
だったので、50Ωの無誘導抵抗をシリーズで100Ωとしパラってみました。
当然押しのパワーは2倍程度必要でしたが、エキサイターからみた
SWRが改善されただけでなく、スペアナでの波形に
クリップが減少し、2nd・3rdハーモニクスも原型より15dB以上改善されて、
びっくりしたことを覚えています。
B級ですから半サイクルしかドライブしないので、逆相の
半サイクルはオープン状態で、いわゆるスイッチング=歪発生器
だったのでしょう。
かなり適当なお遊びで、しかも意図していなかったことでしたが、
きっとクランプ管などで逆相半サイクル時に何がしかの負荷を
与えるのと同じ効果があったのでしょう。
ただしクランプ管を採用したのと違うのは、最初の半サイクル時に
クランプ管はオープン状態で、リニアアンプの入力Zそのものが
エキサイターの負荷となり、逆相の半サイクルでクランプ管のみが
負荷となりますが、無誘導抵抗の場合は最初の半サイクルが入力Zに
パラレルとして入り込みますので、その分押しは必要になり、また
次の半サイクルは、無誘導抵抗のみが負荷となります。
半サイクルごとの負荷が50Ωと100Ωと変動するので、好ましい
状態ではありませんが、100Ωとオープンと比較すればずっとマシで、
このくらいはタンク回路のフライホイール効果で吸収できる
範囲であると思われます。
思い出したらポチポチ書き増して行きます。
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