質問が来た。@FM受信感度測定

FM受信機の感度測定に何度めかの質問が来ました。
5年前に思いつきでザラッと書いて検証もなしで
投稿したのですが、タイトルが仰々しかったためか
結構なアクセス数でした。。。
FMの受信感度測定やFM受信機の感度測定で
検索してみると、なんと今なお1ページ目に登場です。^^;;

で、誤算だったのは今更アナログ測定法なんて検索で
飛んでくるのは、ほぼ国試の模範解答を探しているかたで、
残念ながら拙生の投稿は模範解答にはなり得ないでしょう。。。

質問を要約すると
20dBNQSと12dBSINADはそれぞれで測定した
感度(受信入力電圧)は大体同じ程度の値になるのか。
それは変調の条件(変調指数等)によって異なる?
FMのS/N改善係数が絡んでいるのか?
両者が同程度の値になる(としたら)根拠を教えて。
ということでした。

変調を掛けるのは12dBSINADだけですが、測定条件が
決定していれば変調の条件を可変させることはなく、
また拙生の認識が間違っていなければ、S/N改善係数は
AMとの比較のはずなので、ご質問は1点、両者が同程度の
値になる(としたら)根拠ということでしょう。

勘違いしやすいのは、、無線設備規則には両者とも2μV以下
(周波数によっては2.5μV以下)とかいう数字があるのですが
同じ無線機を20dBNQSで測っても12dBSINADで測っても
2μV以下という意味ではありません。
ひどい大雑把な言い方ですが、いずれの方法で測定しても、
受信機が欲しがる弱い信号を正常に受信できるためにある
スペックなので、大幅にずれていてはおかしいなことに
なりますが、どちらで測定しても。。。とは違います。

20dBNQSで測って然るべき受信機を20dBNQSで測って
2μVつまり6dBμ以下、12dBSINADで測って然るべき受信機を
12dBSINADで測って6dBμ以下、ということであって、
異なる測定法の結果である受信入力電圧を比較すること
自体が無意味であるということです。

アナログで扱っているのは無線テレメータ(70MHz)
だけになってしまいましたが、業務無線が150や400MHzの
アナログが全盛の頃の話しをすると、最大周波数偏移の
許容値が150MHz帯以下⇒±5KHz・400MHz帯が±2.5KHzで、
±5KHzは20dBNQS、±2.5KHzは12dBSINADで測定していました。

おさらいしておくと、20dBNQSは無信号時の雑音出力
(SQは外しておく)を20dB抑圧する無変調キャリアの
受信入力電圧値であります。

ではスケルチを外すとどの程度の雑音が出力されるのでしょう。
移動用の無線機を外部スピーカ端子などで測れば、音量調整
次第でレベルが変わっちゃいますが、通常はマイクコネクタ
などに固定レべルで出力されています。
指令台や他の無線機などに受信出力を渡す場合は、復調出力は
0dBm(600Ω)が一般的であり、標準変調の掛かった十分な
受信入力電圧(例えば30dBμ以上とか40dBμとか)でDEM端子が
0dBmがなるように調整します。
前置きが長くなりましたが、信号ではなく雑音でも、FMの出力の
特性上、この0dBm近辺がが出力されます。
0dBmジャストだとしたら、無変調キャリアを入れて雑音出力が
-20dBmまで抑圧されたときの受信入力電圧(SG出力)が20dBNQS
における感度となります。

12dBSINADは(S+N+D)/(N+D)ですから正確には
受信機のS/Nと歪の両方を睨んだものです。
S/Nのみでも歪のみでもないのですが、先の投稿には
受信出力の歪が12dBとなった時の値と書きました。
これは正確には歪率雑音ですね。
6dBμ(2μV)程度の入力があればS/Nが12dBていうのは、
かなり悪い値なので、歪が支配的な測定法ということで、
つい歪を・・と言ってしまうのですが、こんなに読まれる
ページなら、もっと正確に書くべきでしたね。^^;;

さて、もう一つ説明しておいたほうが良さげです。

工場から出荷された無線設備を現地で受け入れるときに
行うのが現調です。
現調にはハード的な損傷がないかなども含まれていますが、
主には工場検査での測定項目の規定値を、設置先でちゃんと
確保できているか調べて、OKなら以降の責任を現地が
工場から引き継ぐことになるという崇高な儀式です。
ザックリ言うと現地メンテ屋に責任が移る境界線であります。w
で、その規格はメーカが作った仕様に従うものであり、それは
メーカ独自であったり、その機種特有であったり、客先の要望で
あったりで、そこそこで測定法が違ったりします。

例えば先の投稿では12dBSINADは標準変調を掛けたSGの出力で測定
と書きましたが、無線設備規則には1KHzの60%の信号で2μV以下
となっていますが、拙生が多数メンテした某メーカのある型式の
工場出荷時の測定条件は、70%となっていたので、現調時は当然
その値で測定します。
    *ただし2ではなく1μV(0dBμ)以下
トーンが重畳されている時はトーンのデビエーション分だけ
差っ引いて測定します。
   

余談ですがなぜ70%?

440MHz以下のF3Eは、正弦波1kHzで最大周波数偏移の70%が
送信の標準変調だからかと思われます。
対向試験で回線レベルの測定時には、送信側から標準変調で
送信してくるわけで、その電波を受信してS/Nなどを測ります。
当然単体試験のS/N測定も70%です。
無線設備規則において感度のみが1KHzの60%となっている
ことの明確な技術的根拠が薄いと判断しているのかもしれ
ませんが、現調では工場の既定値を持って無線設備規則の値も
クリアしていることを確認しているので問題無しと判断しました。

定期保守点検などで客先へ提出する測定項目は、ほぼ現調時の
項目からピックアップした簡易版みたいなものになるので、
特に客先から指定がなかったので70%やトーン重畳時の測定法は、
デジタルに更新されるまで4半世紀以上継承されました。
測定機の自動モードでで12dBSINADを測ると、SGには1KHzで
デビエーションが±1.5KHzの変調が掛かりますが、わざわざ
±1.75KHzにしての測定でした。
*トーンは±0.35KHzなので±1.4KHzで測定

このように拙生の測定の基準やそれに纏わる投稿内容の数値は、
無線設備規則や国家試験などの模範解答とは異なることがあります。
一番簡単そうに見える最大周波数偏移の測定法などは、きっと
模範解答にはなりえないでしょうね。
この手のことを書く時はそのへんの事情のお断りが必要ですね。
5年も晒しておいて今更訂正するのもナンなので、簡単な追記
だけしておきました。w

HOME

おすすめ