スタックケーブル

スタックケーブル作るときにナニ
使ってんのさ?って尋ねられました。
質問の意図は分かっているのですが
とりあえず意地悪く8D-SFAだよ。と答えると、
オヒオヒそれじゃアンテナを100Ωに
しているってことかい?と来ました。(笑
そこでやっと気づいたふりをして
あ、4スタックじゃなくて2スタックの話ね。
と言ってみる。ww

50Ωのアンテナを2スタックにするときは
50Ωを100Ωまで持ち上げなくてはなりません。
それをパラに接続して50Ωとするわけです。

50Ωを100Ωに持ち上げるときはQマッチ
セクションが70.71Ωです。
で、それに近い75Ωケーブルが使われます。
厳密にはVSWRが1.06となりとなります。

どうしてもVSWRを1.0にしたい場合はアンテナの
入力インピーダンスを56.25Ωとし、通常は
任意長であるアンテナからQマッチまで引っ張る
50Ωケーブルを電気的λ/2の整数倍にします。

メーカ製のアンテナをそのまま使用するなら
一応50Ωになっているとするなら、特殊ですが
RG35/Uや35A/Uなど71Ωケーブルを使用することで
VSWR=1.008となりほぼドンピシャです。
73Ω系ならVSWR1.03程度です。
 * RG35*はごっついし入手も難しいかも。
 * 単体では50Ωでもスタックにすると
   スタック間隔を大きく取れない場合は
   インピーが乱れサイズ変更や調整が必要。   

やっと質問の答えです。

拙生が現在使っているのはRG6/U-ATNL-FLEX
という75Ωケーブルです。
超低損失ではないものの、3重シールドであること、
そして以前100m巻を今では絶対ない超安価で
入手出来たからで、無くなるまではこれで行きます。
なのでアンテナのデザインは当然56.25Ωとなります。

Qマッチセクションを作る上で重要なのが同軸
ケーブルのλ/4電気長を算出する波長短縮率です。
しかしネットなどで探してもこれが書いてある
データが見つからなかったのでとりあえず
他のデータから計算しました。
闇雲に切り貼りしながらの実測は手間が掛かります。

以前のポストに書いたと思いますが結構簡単に
計算できます。

データ表とから分かっているのは
特性インピーダンス 75Ω
静電容量 52pF/m

データ表とノギスで測ったサイズは
実測値を使います。
内部導体径 ≒1mm
外部導体径 ≒4.5mm

で、これらで計算できる2つの別の公式で
検算を兼ねて計算してみます。

公式1
C=(24.16*ℇs)/log(D/d)
52*log(D/d)=24.16*ℇs
ℇs=2.157676349*Log(D/d)=1.41

公式2
Z=(138/√ℇs)*log(D/d)
75=(138/√ℇs)*log(D/d)
√ℇs=138*(log(D/d))/75=1.2
ℇs=1.44

この程度の誤差は許容範囲です。

で波長短縮率は公式1からは0.842で84%、
公式2からは0.833で83%と導きだされました。

     波長短縮率=100/√ℇs(%)

83%の8D-SFAなんかと一緒ですかね。

50Ωケーブルの波長短縮率は分かっています。
両者とも少々長めに切ってコネクタ処理を
しますがそのへんは経験になります。
最終的には両端に56.25Ωに極めて近い抵抗を
ダミーとしてぶら下げてアナライザーなどで
測定するのですが、最初は何度か切り貼りが
必要と思いますが50MHz程度なら慣れれば
1発で作れるようになります。

中心周波数を50.075MHzとした場合、
電気的λ/4はおよそ1.25mとなります。
(*D-2Vなら波長短縮率67%で≒1m)

多エレメントやスタック幅が広くてこれでは
届かない場合はQマッチセクションのλ/4を
奇数倍してやるかアンテナまでのケーブルを
λ/2の整数倍にしてやることになります。
* λ/2の整数倍にしてやるとQマッチ
  セクションの接続点で56.25Ωに見える。
  この場合このケーブルもQマッチとなる。
52・53・53.5・57Ωなどという同軸ケーブルも
あるのですが無理して入手する必要はありません。

他のやり方

アンテナ入力が50Ωの場合
アンテナから任意長の50Ωケーブルを引っ張り
パラに接続すると25Ωになる。
Qマッチセクションを71Ωケーブルをパラにして
35.5ΩとするとVSWRは1.008となる。
75Ωパラの37.5Ωでは1.06となる。

アンテナ入力を56.25Ωでデザインする。
シミュレーションソフトを使いスタックの状態で
各アンテナの入力インピーを56.25Ωに設定し
サイズを計算させる。
アンテナから電気長λ/2整数倍の50Ωケーブルを
引っ張ってパラにする。
Qマッチセクションを75Ωケーブルをパラにして
37.5ΩとするとVSWRは理屈の上では1.00となる。

このやり方はコネクタ処理ができないので
芯線や外部導体を直接ハンダ付けすることに
なりますが50MHz程度なら全く問題なしです。
ただし耐電力と防水に気を使ったハンダ付けと
テーピング処理が必要となります。

オマケ

通常スタックケーブルのQマッチ部分はアンテナからの
ケーブルをJコネクタで受け反対端はT型(J)でパラに
するためPコネクタにしますが、同軸ケーブルの芯線が
絶縁体に糊付けしていないタイプの場合は、巻きに
なったままコネクタ付すると、伸ばしたときに芯線が
中に引っ込んでしまうことがあります。
必ず伸ばしてからコネクタ付をします。
伸ばしてやっても出来上がったあとにケーブルに
テンションがかかっても引っ込む時があるので
要注意です。
自信のない方は他のやり方にあるようにコネクタを
使わなくても144MHzあたりまでなら大丈夫です。
今度作る機会があったら写真入りで解説します。

更にオマケ

拙生がλ/2の整数倍と言うと、某OMに違うでしょ、
λ/4の偶数倍じゃないの?って言われちゃいました。
って、どっちも一緒でしょ。ww

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2件のフィードバック

  1. OQQ より:

    無言で平然と組み立てているなかに、緻密な計算があったのですね。当局の理解を超える記述が多いのですが・・・ANT設計はまさに電子工学で再現性があるですね。ということがわかりました。目からうろこを超えて目玉が落ちそうです。Oba-Qさんの技術的記事は永久保存しなければなりません。くれぐれもサーバーのバックアップ(ミラーリングって言いましたっけ?)をお願いいたします。

  2. Qsaku より:

    あまり褒めると天まで昇っちゃいますよ。(笑

    アンテナを闇雲に調整した時代もありましたが
    上手くいったときの経過をみると結局は
    アンテナ理論に近づいてゆくことに気づきました。
    以降机上計算に時間をさいています。

    以前のサーバー事故でアンテナ記事をかなり失いました。
    ご忠告肝に命じます。