基本波障害

何度か書いていますが、先日お伺いしたアンテナのオーナーと
インターフェアについて少々話したので、そのへんについて
ちょっと書いておきましょ。

最近のインターフェアは殆どが基本波障害です。
多くはインターフェアを受ける側のイミュニティが
低いために発生してしまいます。

 参考
 イミュニティとは電気機器が他からの電磁波や
 電流などに晒された時の免疫を言います。
 免疫よりも電磁感受性と訳したほうがそれっぽい?。

拙生がインターフェアと格闘した最多例は多機能電話でした。
ラジオでもないのに電波を出すと音声(モガモガですが)
が聞こえるとか、子機でぶら下がっているインターフォンに
ピンポンダッシュするとか。
さらに通話が切れてしまったり掛けてもいないのに着信してしまったり・・・・

基本波障害は幾ら電波の質を良くしても止まりません。
LPFやHPF・BPFを挿入したりアースを強化しても
効果があることはごく稀でしょう。
コモンモードへの流出、コモンモードからの流入を
防ぐしかありません。
最近はそれらを含めて電波の質と言う場合があるようですが
ここで言う電波の質はあくまで法に掲げる周波数偏差
・占有周波数帯幅・高調波の強度等の3点のことです。

まずは自身の設備から

トランシーバやリニアアンプなどから出ている信号・
電源・制御・アース系のすべてのケーブルに、
コモンモード対策を行います。
ローテータなど制御されている機器ではコネクタ付近の対策も有効です。
水平アンテナはリニアバランが入っていれば、その役割を
果たすだろうと安心してはいけません。
大地から見てバランスしている水平アンテナは理想的な
設置環境が必要で、片側のエレメントが屋根にかかっている
場合などはバランスが崩れ、コモンに流出してしまいます。
ですからリニアバランの後ろにコモンフィルターをつけると
有効な場合が多いのはそのためです。
これらの対策は受信の際のノイズ軽減にもつながるので
頑張った分のご褒美にオマケが期待できそうです。w

被障害機器側の対策

自分の設備同様、流入してくる可能性のあるケーブル
全てに対策を行います。
というか、機器に引きこまれているケーブル全部と
言い変えても良いでしょう。

対策方法

簡単かつ一番効果のあるのはトロイダルコアやEMIコアで
コモンモード電流を阻止することです。
無線機出力などインピーダンスが分かっているものは、
同軸ケーブルをトロイダルコアに巻いたコモンフルター
(CMF)の挿入が一般的です。
ではインピーダンスの判断がつきにくいケーブルは?
って書くと特別なノウハウがありそうな雰囲気になりますが、
残念ながら種も仕掛けもなく同様の対策となります。

これはコモンモード電流を理解していれば分かることで、
無線機出力のCMFに同軸ケーブルを使うのは、あくまで
ノーマルモードにおいて同じインピーにするためです。
コモンモードでの振る舞いを大雑把に言うと、何芯の
ケーブルであろうが1本の線(アンテナ)とみなし、
還流路は大地なのです。
もちろんこれはアース用の単芯ケーブルとて
例外ではありませぬ。
接続されているケーブルは全て流入・流出経路になりうる
アンテナであるという考えで対策しなくてはなりません。
それは形態や電気長によりアンテナとしての働きは
様々ですが、ザックリ言うとロングワイヤーが繋がっている
くらいの考え方で良いと思います。

そう考えれば使用周波数やケーブル長、配線の形態、
機器の終端状況などでコア挿入箇所インピーダンスは
異なりますので、効果が少ない場合は巻き数を増やしたり
挿入場所を変更したり複数の挿入を試みます。
必ず効く場所や巻数があるはずです。
もちろん偶然にも高周波的にうまく終端されていれば
進行波型のアンテナと考えてもよいでしょう。
そのときのインピーは一定です。

 注意 CMFは無線機から垂直に配置します。
    自作などのCMFで複数のトロイダルコアをシリーズに
    した場合、隣接するトロイダルコア同士は直交させます。
    (特に電源などで使うキャンセル巻き)

    アースを強化した途端インターフェアが増加
    してしまったという語るも涙の場合は、無線機への
    接続部分に入れるコアを増やします。
    高周波からフローティングし、基準電位を定める
    直流的なアースにとどまるようお祈りしましょう。
    高周波電流を流してしまった途端にアース線(無線機も含む)は
    接地アンテナに変身してしまいます。

最近は分割型のEMIコアをパカパカはめるのがトレンディ
のようですが、まともに買うと結構なお値段なので、
在庫が少なくなるとハムフェアやミーティングのジャンク市
などで見つけたら買い漁っておくのが常であります。

それでも止まらない・・・

イミュニティが極端に、というか最悪なものもあります。
音声しか増幅しないのに高周波対策を全くしないで、
裸利得の高い広帯域アンプをそのまま使用しているものなどは、
接続されているケーブルを全て外しても、直接の電波で
モガモガが聞こえてしまうことを経験しました。

機器を開けていじれるものであれば、内部配線にフェライト
ビーズを奢ってやったり、検波してしまう回路構成の部分に
パスコンを挿入したりするという対策になりますが、
リース機器などで勝手にいじれない場合もあります。

そんな時はリース会社やメーカに対応してもらうしか
ありませんが、基本波障害と理解させるまでは無線局側が
まるで犯罪者のような目で見られた時も多々ありますけど、
ま、根気強くやってゆくしかありません。

参考1(ノーマルモードのお話)

昔と違いイマドキの無線機は高調波が非常に少なくなりました。
例えば高級機だと最大でも-60dBとか、クラブ局で使用している
チープなものでも-50dB以下などというカタログ値です。
カタログからナニがしかのマージンは持っているはずですから
極めて立派な値ですね。
ちなみに基本波100Wに対し-50dBというのは1mWです。
2倍の高調波でその値なら3倍はもっと少ない?
ここで気をつけるのはアンテナです。
7MHzのダイポールアンテナなどは3倍の21MHzが乗っかります。
8の字ではなく羽を広げた蝶々のようなパターンになりますが
4枚の羽根野方向にゲインを持ちます。
ですから高調波が2倍より少なくてもアンテナからは強く
輻射される可能性はあるわけで、それでもほとんど無視
できるとは思いますが、基本波1KWに対して-60dBなら
1mWでありアンテナのゲインも効いてきます。
微量な高調波でも無視できない超ローカル局がいたり
マルチバンドのコンテスト局などでは別途LPFやBPFなどを挿入なくては
7MHzで電波を出したら21MHzが聞こえないなんて悲惨なことに
なってしまいます。
(もちろんコモンモード対策はもっと重要)

参考2(コモンモード電流検出計製作のススメ@簡単) 

大きめな分割コアを探してコモンモード電流の検出計を
自作しておくととても便利です。
コアに線を数ターン巻きつけ、それを立ち上がり電圧の
低いショットキーバリアDiやゲルマDiで検波します。
まさに昔一度は作ったであろうゲルマニュームラジオです。
その出力にはイヤホンではなくラジケータなど、感度の良い
メータを接続するだけです。
ピックアップとなる分割コアを調べたいケーブルにはめ込み、
送信しながら摺動させ、メータが振れればそこにコモンモード電流が
存在していることになります。
分割コアが入手困難なときは短いダイポールなどをアンテナとし
ケーブルに近づけて摺動させてもOKです。
たしかキットもあったはずですので作るのが面倒な方は
探してみてください。
拙生はこれがなければコモンモード電流対策ができません。
またバラン製作時などにも有用な測定器となります。

参考3(社会的なこと@近所付き合い)

インターフェア対策は技術的なことばかりではありません。
普段から仲の良いご近所さんで発生したなら簡単に
対策させてもらえるでしょうけど、仲が悪かったり
よく知らなかったり会社などの場合は対策に漕ぎ着けるまでに
苦労する場合があります。
某団体がパンフレットを配ることを推奨していますが、
パンフをポストインしただけでは無線と無縁な人が読んでくれて
内容を理解してくださることはごくごく稀であることを肝に銘じてください。
パンフを配って何も反応がないから大丈夫なんてことは
1ミリもありません。w
パンフを配るときは必ずお伺いして手渡ししながら分かりやすい
説明を心がけることが必須なのです。
必要あらば菓子折り一つ持参することで最初の関門を突破
できることもあります。

仲のよろしくないご近所さんに、最初からオタクの機器の
イミュニティが悪いから・・なんて話は追々分かってもらう
ことにして、とにかく対策ができる段階に持ってゆくことに
徹底することが大事です。
仲が悪くなくてもタワーや風が吹くと大きく揺れるHFアンテナは
関係のない人には危なっかしくしか見えないので、悪い印象を
もたれている場合がほとんどと考えましょう。
普段のお付き合いの程度により柔軟に対応することになります。
つまり住宅地などでの運用は普段からの近所付き合いが重要に
なるということです
自身で難しい場合は専門家(業者)に任せるのも有効な手段です。
拙生は専門家ではありませんが、自身の分や依頼されてニワカ専門家
として行った対策は数多くあります。
専門家というフリをしてお伺いすると、意外とスムーズに
行くものなんですね。www

参考4(地デジになったからだいじょうぶ?)

拙生が盛んに出ていた21MHzの5倍高調波はアナログTVの
3CHの中心周波数であり、札幌ではNHK総合でありました。
終段が真空管式トランシーバとリニアアンプのチュニングの
とり方で、モニタ用TVの縞模様が大きく変化したものです。
さて、アナログTV放送が終了し地デジになってTVIの心配は
なくなったのでしょうか。
実はデジタル方式は優秀で、送信パワーは10分の1で十分という
わけのわからない方針から、地デジの送信パワーはアナログと
比較すると-10dBとなってしまいました。
ビル陰の受信でも大丈夫などと宣ったせいで、多くのビル陰
対策用の共調設備が撤去されてしまいました。
そのことで弱電界による地デジ受信弱者が大量に生まれ、
アンテナの高さ、位置、高性能化で対策したり、ブースターの
使用で辛うじて受信しているお宅も多いのです。
デジタルは映るか映らないかのどちらかです。
ギリギリでも映れば画質は強電界と変わりません。
(映っていたものが一瞬でも映らなくなると修正機能が働き
 ブロックノイズが発生したり、映らなくなる前の画像で
 静止状態になったりします。)
そんな中で受信ブースターのゲインを最大など、必要以上に上げて
いたりすると、HFのの強力な電波でサーチレーションを起こす
場合があります。
そのような場合の対策は、流入がノーマルモードなのかコモンモード
なのかを見極める必要があり、ノーマルモードであればHPFなどが
有効になります。
それより受信ブースタを適正ゲインに調整し直すことが先決ですけど。

ちょっと書くつもりが長くなりそうなのでこの辺で。(笑

HOME

おすすめ