直流的振舞い

リニアアンプのお話しです。

バイアスを変化させてIpの直流的な振舞いから
球の特性を予め把握しておく、と言う拙生の儀式に対し
そんな必要あるン?必要なアイドリングが電流が
流れるように設定するだけでいいんじゃない?
後は歪まないところまで押すだけでしょ。
と言い放った御仁がいらっしゃいます。(笑
確かにそれでも良いのかもしれませんが、
拙生としては全く気に入りません。

拙生のリニア製作の楽しみは、実は工作自体よりも
あれやこれやと考えることにあります。
球が特性表通りの動きをするなら設計は容易です。
しかし新品の球でもそうではないものが多々あり、
それ故、ペア球を探すのに苦労するわけです。
新品ですらそうですから、貧乏人の拙生が使用する
中古球なんぞはもっと酷い状態です。
ですから直流的な振舞いを調べることは、その球の
特性表を新たに作り直すことと同義であり、
その結果から計算して回路の値を決定するのです。

仮に特性表通りの動きをしたとしても、各電極の
電圧が多少でも違うなど、与える条件が変われば
違う振舞いとなります。
メーカ・自作を問わず、アマチュアの管球式アンプで
あまり気にされていないのが、フィラメント電圧です。
球の規格通りに掛かっていても、パワーを出すと
2割近くも電圧降下で落ちるメーカー製直熱管アンプを
見たことがあります。
トランスを見ると小さく、全く余裕が無いのではと
思われます。

他の電極の電圧がどぉであれ、これだけで頭打ちが早い
ヘナチョコアンプであることは容易に推測できます。
逆に2割以上高い電圧が印加されていたことも。。
パワーは出てくれるかもしれませんが、球の寿命は
縮むこと請け合いですね。。。

とにかく直熱管でフィラメント電圧が規格と違うと、
電子流が全く違ってくるので、思わぬ動作になって
しまうことがあります
直熱管のフィラメント電圧こそ規格通り、かつ安定
してなければいけないと思うのですが。
できるなら直流安定化電源でも使用したい位です。

あ、フィラメント電圧は厳密に言うとトランスの
2次側やソケットのピンで測ってもダメで、直接
ピンに掛かっている電圧を当たれるように工夫します。
3-500Zなどの場合はフィラメントの足のハンダが
盛ってあるところに、リード線をハンダ付けします。
(RFでドライブする段階では外してしまう。)

で、GKはバイアスを可変できるように作るので
問題ないとして、GGのバイアスを連続可変できる
試験用の治具(*)を持っていない場合は、
バイアス用のツェナーDiをショートして、
Ipを余分に流して見ると良いでしょう。
と言っても、調べてドロップが分かったとして、
では余裕のあるタップ付きトランスに交換しましょ。
なんてことは簡単にできるものでないので、
実際に各電極にかかる電圧などを含めた直流的な
振舞いを見て、特性を推し量るのが手っ取り早くかつ
正確であり、それを元に回路定数を決定すべきです。
(それにしても2割落ちはNGです!)

更に・・・特性表を読もうと思っても、読み切らないものも
あるんです。

gu-5b-2
某3極管のIp-Eg曲線ですが、5000Vのゼロバイアスで
Ipは1Aと読み取れます。

gu-5b-1
しかし同じ球なのに、上記特性表では0.8Aと読めます。

違いが200mAといえども5000Vだと1KWもの差があります。。。

更にゼロバイアスで使うようなたまではないので、
バイアスをかけて希望のアイドリングまで抑えますが、
例えば250mA程度に抑えたい場合のグリッドバイアスを見ると
上では-50V位だし、下では-25とか-30Vくらいに見えますねぇ。

どちらかを信じたとしても、数値がもこんな大まかなグラフでは
バイアスを決め打ちできるような情報にはなっていません。
結局事前のお試ししかないということになります。

また予定最大Ipを流したとき、Ip・Igメータから読み取った
値はGGアンプの入出力インピーダンスを推し量るベースにもなります。
またその時のバイアス電圧で、押しの最大(ピーク)パワー
も分かります。
勿論予定最大Ipは、バイアスとIpの変化がリニアの
領域でなくてはいけないのは言うまでもありません。

gu-5b-3
↑ 某3極管のフィラメント電圧と電流のグラフです。
規格が12.6Vなのにそこまで延びていないって一体・・・
ま、ロシア球ということで諦めましょ。w

結論

あるところまでは工作して、その課程で直流的な振舞いを調べ、
知り得た電圧やインピーでバイアス回路を組んだり、コイルの
調整やタップ出しに入るという段階を踏むのが拙生流であります。

* GGの試験用バイアス電圧可変治具は
  パワーTRと抵抗・VRで簡単に出来ます。

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