電離層のご気分

滅多に読まなくなった某無線誌に、ちょっと
興味を引く記事がありました。
翻訳ソフトで翻訳したものを載せたと思われ、
例の分かりづらい日本語になっており、
理解するのに手間取りましたが、要約すると

1 電離層反射による2点間の通信に必要な
 アンテナの仰角は、電離層によって
 決定されていて、アンテナ自体の2点間通信に
 必要な仰角とは関係ない。

2 電離層の要求するDX通信に必要な入射角は、
 アンテナの低打ち上げ角が最も重要。

3 DX通信には低打ち上げ角だけでなく、地上高が
 低いアンテナに見られる高い打ち上げ角も必要。

違和感を感じる理由

以降簡素化のために、大地も電離層もザックリ
平面として、また電波は直線として考えます。

例えば仰角30°で打ち上げられた電波は、電離層に
入射角60°として突入します。
(臨海周波数より高い周波数であっても、ある
 入射角以上になると反射条件を満たす場合が
 あることは周知の事実ですね。)
この仰角で反射条件を満たした場合、入射角と等しい
反射角で反射され、電波は地上に向かいます。

F2層での反射点が400Kmの上空なら、反射点直下までの
地上における距離は≒693Kmとなります。
反射された電波の到達点はその2倍の1386Kmです。
同様に打ち上げ角が60°の場合を考えると入射角が
30°となり、到達距離は462Kmと1/3になります。
上記計算で安直に考えると、打ち上げ角が低いほど
遠くへよく飛ぶ。。。。となるでしょう
教科書の絵によく出てくるやつです。

このようなDX通信のアンテナは地上高が高く、
低打ち上げ角であるほどFBである。
という観点に囚われ過ぎると、1のアンテナの
打ち上げ角とは関係ないという表面だけをナゾって
違和感を感じる方がいるかもしれませんね。

ちょっと考察

キモは【2点間の通信に必要な】というところでしょう。
どの2点間で何度の仰角を要求するという具体的な数字は
書いていませんが、例えば拙生の中では比較的アクティブに
出ていた15mや17mバンドあたりでは、日本と1万数千Kmの
距離にあるカリブ海は、10°の仰角が最も有効と先輩諸氏
からお聞きし、10°にするための地上高を確保し、実際に
FBな結果を得たので、経験的に10°程度ではと考えることが
できます。

仰角10°=入射角80°ならばワンスキップ4537Km程度となり、
3スキップの13611Kmでカリブ海に到達する計算です。
(逆に1200Km程度の距離のキューバが開けるときは、
 10°よりちょっと高いほうが良いのかもしれません。)
しつこいようですが球面ではなく平面での簡易的な
考察であり、実際にはもっと緻密な計算が必要です。

要は日本とカリブ海の通信で、電離層が決定した入射角が
80°だとしたら、10°の打ち上げ角を持つアンテナが一番
有効であると記事では述べているようです。

HFのハイバンドのビームアンテナで、打ち上げ角が
10°となる1λ強程度の地上高を確保することは比較的
簡単ですが、ローバンドでは難しいですよね。

1λより低く、打ち上げ角が15°や20°だたとしたら?
先ほどまでは電波を線として考えましたが、実際には
線ではありませんので、垂直面のパターンを見ると、
10°の部分にも-数dB落ち程度のエネルギー成分が
輻射されています。
ですから全く届かないわけではなく、若干落ちると
いう表現にでもなりましょうか。
DPやGPで10°のパターン成分が-10dB以下の場合、
アンテ自体の利得がないことも相まって、極端な
差となるでしょう。

また2点間が日本と近間(東南アジア等)の場合は、
違う入射角が要求されるので、カリブによく飛ぶ
アンテナが近間にもよく飛ぶとは限らないのは、
必要とされている高めの仰角のエネルギー成分が
小さいからと言えます。

DX通信に必要な入射角は、アンテナの低い
打ち上げ角が最も重要としながらも、高い
打ち上げ角も必要としているのは、
近間のことを言っているのだと思われます。
一気に4500Kmじゃ飛び越しちゃいますからね。

こう考えると実に納得できる話ですね。

イメージ的には電離層に2点間通信に必要な
トンネルがあり、入射角でぽっかり開いている入り口に
効率よく電波を注ぎこむには、入り口にまっすぐ
(すなわち要求入射角)で突入させると考えると
分かりやすい。。。かな?

話は変わって。。

偏屈な拙生はサイクル21と22のボトム期に10mの大型
アンテナ(10ele八木は当時ではシングルでも大型の振るい)
を上げていました。
臨海周波数がほとんど1桁台の時にでも、数日に1度、
週に何度かは北米やインド洋が長くて1時間、短いと数分程度
オープンしてくれる時があるのです。
臨海周波数が2桁に上がってくれる時があるのですね。
あとはMUFをいかに高くするかですが、大半がアンテナの
打ち上げ角に依存されます。

ボトム期に差し掛かる前に上げた10ele八木は、
標準大地なら地上高が15mもあれば、打ち上げ角は
10°程度となりますが、当時は住宅地だったので
地上高21mでどのような垂直面パターンになって
いるかはまったく予想が付きませんでしたが、
ローカルの15mhigh6ele八木と比較すると、住宅地では
高ければ高い程FBなのではと思います。
実はコンディションが良い時は、高さもエレメント数も
優っている拙宅アンテナとロカールの6eleにさほどの差は
ありませんでした。
ところがボトム期に入ると、拙生がやっている北米や
インド洋などがカスリもしないのだそうです。

2点間通信で電離層が要求する入射角とは別途に、
コンディションが悪い時は、MUFを28MHz以上にするための
大きな入射角が必要なので、その2つの角度が合致して
更にアンテナの打ち上げ角も合致して・・・
そこで初めて通信が可能になるので、開ける頻度が
極端に落ちると考えているのですが。。。

CQの100連発で全く釣果の無かった日もあれば、
多分10mでは拙生しか出来なかったペディションもありました。
なにせボトム期の10mなんて競争相手が誰もいませんから。(笑

ま、簡単に結論づければ、開ける開けないは電離層様の
ご気分次第と言うことで。(オソマツ。

■ 追記

日本ーカリブが10°ではと書きましたが、2スキップで
計算すると7°程度です。
打ち上げ角10°のアンテナでは、7°の成分も十分
含んでいるのでドチラとも言えませんが、
1.33λの地上高より1.97λのほうが良く飛ぶのなら
電離層は2スキップの仰角を要求しているのでしょう。

また簡素化した計算は平面上の話ですから、上記の
数値は全て仮定です。
例えば要求している仰角が10°あたりが正解なら、
入射角は80°より小さくなり、1スキップの距離は
小さくなりますので、スキップ数が多くなると
いうことです。

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