L型ATTの勘違い

一番簡単な構造を持つL型ATT使用の失敗談です。

50Ω純抵抗受けのアンプで1KW免許を取得しようとした友人。
エキサイタは100W機で、フルパワーではオーバードライブです。
そこで考えたのがL型ATT。

     —-R1——-
          │ 
エキサイタ    R2   リニア(グリッド入力)
          │ 
     —————

ここまでは拙生のクラブ局用アンプと全く同じ状況です。
(同じ構成ですから。。。)

で、拙生が紹介したATT計算サイトで、6dB減衰のL型ATTを
計算・作成しドライブしたところ、エキサイタから見た
SWRが上昇(1.5程度)し、フルドライブではIgが流れてしまう
とのことでした。

電話で詳細を聞くとなにかおかしい。
そうなんです。6dBのL型ATTは計算させるとR1が25Ω、
R2が50Ωとなります。
友人は50Ωの無誘導抵抗はすでに入っているのでOKとし、
R1の25Ωを加えただけだったのです。

計算サイトで算出したものは入出力ポートが50Ωですが、
球のIgが流れなければCgの入力Zは高インピーダンスとなり、
条件に適合しておりませぬ!
50Ωで受けたもの(入力容量は無視してのお話)に対して
初めて算出した値が適用されるのです。
50ΩはR2とパラに入り込んでいなければならないのです。
つまり合成して1本で済ませるなら25Ωとなります。

R2を合成した値で考えれば、R1とともに25Ωですから
電力は1/2(-3dB)ですが、AB1クラスのグリッドドライブは
電圧ドライブなので電圧も1/2、つまり6dB落ちということです。

友人方式ではエキサイタから見ると25+50Ωで75Ωとなり、
VSWR1.5程度になるのは正常な表示であり、R1・R2の比から
3.5dBのATTとなります。
1.5程度だからとエキサイタ間をアンテナチューナーを
使用してフルドライブすると、電圧はEcg(-51V)を
超えてIgも流れたのは当然でしょう。
6dBATTならドライブは35.4V、ピーク値でも50Vですね。

ALCの併用も考えましたが、なぜか50Ω無誘導抵抗を
たくさん持っていとのことで、4個をパラシリーズにして
中点からドライブするようアドバイスしました。

L型は構造が簡単で今回のような用途では使用可能ですが、
πやT型のようにポート双方向での可逆性はありませんので
使えない場所もあるので要注意です。R
(πやT型でもZ変換を兼ねたものには可逆性なし。)

なお上記例では入力合成Rは25Ωとなるので、入力容量が
110pFもあってもキャンセルコイルなしで29MHzのVSWRが
1.12程度に収まっています。
それ以下の周波数では全く問題なく、50MHzでも1.33を
保っていてなんとか使える値?
気になる方は50MHzだけ0.1μHをリレーなどでぶら下げれば
よいでしょう。
正確に計算すると50.1MHz・110pFだと0.0917μHですが、
SWRだけなら0.1μHでも1.005です。
2mmの銅線を直径15mmコイル長15mmで3回も巻けば計算上
ぴったり0.0917μHですが、配線長を最短にしても0.1μH
位になるでしょうから、コイル長を引き延ばして調整します。
*直径とコイル長が同じくしてあるのは、ハイQが要求される
 コイルを作成するときのくせで、ここではQはあまり
 気にしなくてもよいのでこだわる必要はありませぬ。

ちなみに200W機などでドライブパワーが余っている場合、
12.5Ωで受ければなんの細工もなしに50MHzでも1.09程度です。
110pFはGU74Bパラの場合などですから、これがシングルとか
違う球で55pF程度なら1.00023とキャンセルLは全く必要ありません。
トロイダルコア1個ないし2個(4:1のステップダウン)で
すんでしまいますね。

■ ついでなのでATTについてもうちょっと語ります。

ATTは一般的なπ型やT型以外にもあります。
拙生が知っているだけでも20種類以上。

例えば不平衡型を上下対象に配置すると平衡型になります。

     ——-R1—–
      │    │ 
IN    R2    R3  OUT   不平衡
      │    │
     —————-

     ↓

    ——–R1———
      │    │ 
     R2    R3
      │    │
IN    G————G   OUT   平衡 
      │    │ 
     R4    R5
      │    │
    ——–R6———

勿論Tやブリッジ型の組合せでも平衡型ができます。

グランドレベルが不要(フローティング)なら以下でOK。
     ↓

     ——-R1—–
      │    │ 
IN    R2    R3   OUT   平衡
      │    │
     ——-R4—–

こんな感じで組み合わせられるので、いくらでも
出来そうです。

最後のATTの計算式を例として示します。

R1=R4=(Z/4)((10^(loss/20))^2-1)/(10^(loss/20))
R2=R3=Z((10^(loss/20)+1)/(10^(loss/20)-1))
            (lossは必要減衰量(dB))

この程度の式は表計算ソフトや関数電卓に簡単に
放り込めますが、なにせATTの種類が多く面倒で
全部を作る気にはなりません。(笑
幸いにもweb上で計算できるサイトがたくさんあるので、
ありがたく利用させていただいています。

参考になるサイトがありますのでご紹介しておきます。

多くのATTの種類と計算式が掲載されている
TOKYO KO-ON DENPA WEBSITE

ATT以外にも便利なツールがたくさんある。
(インピーダンス変換用ATTの計算できるツールは
          他サイトで見たことがない。)
高周波回路設計(RF Design PLL Design) RFDN !

RF設計ツール → インピーダンス変換(マッチング)用

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