インラッシュカレント@その2

先に平滑Cのインラッシュカレントについて
ポストしましたが、インラッシュカレントの要因は
トランスへ電圧印加した時の励磁突入電流も
忘れてはなりません。

トランスのコアを励磁する電流は過渡的に大くなり
電圧投入初期で定格の5倍から10倍近くまで跳ね上がり
時間と共に落ち着いてゆきます。
原因はコアの磁気飽和で、飽和ラインを超えている間は、
励磁電流が発生します。

コアの飽和特性により励磁突入電流の大きさや残留時間は
大きく異なりますが、リニアアンプに使用する大型のコアでは
通常は3~4秒後にも初期電流の20%程度は残留することがあります。

つまり一次側が200V20Aの定格のトランスなら、本の一瞬ですが
100~200Aの励磁突入電流が流れ、3~4秒後にも20~40Aも
流れるという可能性があるということです。

これだけ大きな電流が流れると、瞬間的に電圧が低下します。
また励磁突入電流はDC成分も含まれるため、ゼロ位相による
漏電ブレーカが落ちる可能性もあります。
負荷も接続されていないのにトランスの一次側の電圧を
掛けただけでブレーカが落ちた経験をされた方は
励磁突入電流が原因だと覚えてください。

しかもこの励磁突入電流ってやつは、印加した交流が
+の高い間だけ磁気飽和を起こすため、DC成分を含むだけではなく、
ピークの波形が半波整流みたいな形であるため、高調波を
発生させます。
この高調波成分により負荷にぶら下がっている特に静電容量に
おいては過負荷となったり共振(並列)によるインピーダンス
増大で高電圧が発生することによるトラブルもあり得ます。
勿論平滑回路がチョークインプットなら、チョーク自体の
磁気飽和も考えられます。

とにかくこういったインラッシュカレントは大電力を扱う
整流回路にはつきものであり、対策を講じない場合は事故に
つながる確率が飛躍的に高くなることを肝に銘じておくべきです。

* だいぶ脅かしましたが、上記は大きなトランスの話です。
  もちろん小さなトランスでも発生しますが過渡特性なので
  部品の一瞬の耐電圧や耐電力は思ったより高く吸収されます。
  ただし部品の表示スペックギリギリなものを使い、インラッシュ
  カレント対策を全く行っていない場合、  部品のスペックマージンで
  耐えていることも多々あり、経年劣化などでヘタってくると、
  事故になり得ることも覚えておいてください。

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