リクエストのHB9CVです。。。

予感はしていましたが、長くなってもよいから
HB9CVやツェップアンテナについてもっと書け
というリクエストがありました。
ということで眠くなるまでは書こうかと。。。

HB9CVを語る前にチョトだけ昨日の補足を。
友電で友曰く、別に4エレHB9CVで通じるなら
それでイイんじゃねぇ?
では4エレメントダイポールアンテナと言われても
違和感を感じちゃいけなくなりますか。。。w
それはないにしても、4エレHB9CVと言われたときに
ムキになって相手を選ばずに、それは間違いだと
力説するわけではなく、違和感を覚えると言って
いるんです。
違和感を覚えるのは拙生の勝手ですよね。。?

更に技術的に詳しく、4エレHB9CVという言葉を初めて
聴いたかたなら、下手するとHB9CVのスタックなどと
思ってしまう可能性があります。
遠い昔の話ですが、拙生の例で言うと、無線機屋で
留守番を頼まれたとき、お客様からオニギリマイクは
置いてないの?と尋ねられました。
頭に浮かんだのはちょっと丈の短い三角形に近いやつか、
滅多にないけどまんまるのマイクだったので、
ないと答えたのですが、握るからオニギリマイクであり、
PTTスイッチが横に付いているハンディタイプマイクの
総称であることを知ったのは店主が戻ってからでした。。。

また、ツエップアンテナ上げたけどさっぱり飛ばないと
相談を受けて一生懸命考えているのに、途中からひげが
付いているという話になり、展開しているエレメントの
さきっちょにある調整用かと思っていたら、そのひげとは
展開エレメントと反対側の給電部に付けている。。。
つまりオフセンターアンテナのインピー合わせのための
ひげてあったことが判明したことがあります。
特に技術的な話をしている場合、正確性を欠くと
話がとんでもない方向に行ってしまい、噛み合わず
不毛な時間を費やす羽目になります。
もちろんそれ以降はツェップアンテナとかツェップ型と
言われても、形状を確かめてからお話しを始めることに
しましたが、このように違和感だけではすまない話にも
なりかねないということなんです。

さて、前ふりが長くなりましたが本題です。

HB9CVの宿命

原型のHB9CVのエレメント間隔は、λ/8を基本と
しますが、フェーズラインの持つ速度係数により、
λ/8.5とかになってしまいます。
これがブームが短くても高性能であるという理由の
一つに上げられているのですが、実はフェーズライン
だけではなく、八木アンテナと一緒で、一方のエレメント
から輻射された電波の到来によっても、他方に誘起された
電流が流れることも考慮に入れなければなりません。
例えば14MHzCW用に設計したHB9CVのエレメント間隔は
λ/8では2.6mちょっとですが、フェーズラインで135度の
位相差を持たせるためには速度係数を考慮に入れると
2.5mジャスト程度になります。
理想的なHB9CVとし各エレメントに同じ電圧が給電されると
20mHighのリアルグランドで、ゲインが11.1dBi・F/Bが
17.05dB取れる計算です。
ではこのエレメント間隔とエレメント長を維持したまま
2エレ八木のように1本のエレメントから給電すると
ゲインは11.1dB・F/B10dBという計算結果が出ました。
ゲインは似たようなものでF/BのみHB9CVが勝っています。
ただし八木にした場合の最適化を行っているわけではありません。
フェーズラインがなくともこれだけのパターンが出るって
ことは、137.65度という135度以外の位相の電圧も、無視
できない位誘起されるんだということを知っていただきたく
例にしてみました。
つまりフェーズラインの速度係数がある限り、理屈とは
違ってくるんです。

実際に製作する段階ではHB9CVは不確定要素が満載です。
まず、HB9CVが理想的に両エレメントに同じ電圧で
ドライブされているのかどうかを調べるのは至難の業です。
通常は給電部に近いエレメントはガンママッチなどで直接
ドライブされますが、もう一方はλ/8のフェーズラインを
介して、異なる長さのエレメントに給電されます。
同じ電力が給電された場合は同じインピーダンスでない限り、
同じ電圧は発生しません。
異なるインピーダンスであれば同じ電圧になるような
電力分配をしなければならず、遠いエレメントは
フェーズラインを介しているため更に事情をややこしく
してしまいます。
だからといって電圧の比が0.4:0.6とか0.6:0.4で計算しても
極端なスペックダウンにはならず、それなりのゲインと
パターンは出てくれますので、結局は同軸ケーブルとの
インピー合わせのために給電側のショートバーだけで
調整を終わらせることがほとんどですから、理想的な
状態のスペックは望めるはずもありません。
これは逆算の意味で、ゲインやF/Bが取れる最適化を行うと
両エレメントのインピーがほぼ同じ値になることでも
分かります。
でも、理屈上ではなく実際に長さの違うエレメントを
同じインピーに調整するって難しいと思いません?

広帯域?

またVSWR帯域に関しても誤解があるようで、VSWR
1.5の帯域は同じ間隔、同じエレメント長の2エレメント
八木より狭く、八木をゲイン重視で最適化したものと
同等となります。

HB9CV+α

さらに原型にパラスチックエレメント(ディレクタ)を
付加したら、ますます電圧のバランスが崩れます。
理想的なHB9CVのフロント側4mのところにディレクタ
になるパラスティックエレメントを付加すると、
近いエレメントのインピーの低下が大きく、遠い
エレメントの1/4以下になってしまいます。
で、このままの状態で中央エレメントのみに給電し
3エレ八木にすると、ゲインもF/BもHB9CV+1のときと
殆ど代わり映えしません。
更に八木アンテナとして最適化すると、70cmほどブームは
長くなりますが、HB9CV+1のスペックを軽く上回ります。

余談ですが・・・
給電部から遠いエレメントは近いエレマントより長いので
リフレクタと呼びたいところですが、パラスティック
エレメントではなくドリブンエレメントとなるので
リフレクタとは呼ばないという文献を見た記憶があります。
何十年も前なので出典とかは全く覚えていないのですが、
以降HB9CVの後方エレメントをリフレクタと言わなくなりました。

拙生は1980年台の早い段階でろくな想定機も持たない
ころでしたが、簡易的な測定ではありましたが、計算上と
ほぼ合致した段階で、多エレメントであればHB9CV+αより
八木アンテナのほうが絶対優秀であると結論づけました。

2エレメント八木との比較

実は比較的最近凝りもせずに30mでHB9CVを試しましたが
やはりF/Bがちょっとイイかな?と思える以外はパっとせず、
エレメント2本じゃ大きな期待は出来ないと判断し、得意?の
簡単なバラン直結にするために3.5mブームを5mちょっと
まで伸ばし50Ω入力としました。
ところが期待しなかったこのゲインとF/Bのこだわりを捨てた
単なる2エレ八木が、実によく聞こえよく飛んでくれています。(笑

給電部分の工作はシンプルな八木の数倍面倒ですが、苦労して
得るものは少ないアンテナだと思います。
少しでもF/Bは欲しい場合か、設置条件で少しでもブームを
短くしなければイケない以外にHB9CVにアドバンテージが
あるとは思えないのですが。。。

結論めいたもの

理屈・計算・測定・使用感から、HB9CVは3〜4エレメント
八木と同等の威力があるとか、SWRの帯域が広いというのは
都市伝説であると断言します。
結論めいたものが出てきたころで眠たくなってきたので
おしまいにしますね。
ツェップは・・・お約束は出来ませんが近いうちに。。。

 ・文中に八木とか八木アンテナとあるのは
  八木・宇田アンテナのことです。
 ・インピーはインピーダンスのことです。

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