デカップリング

IFを3段にしたら見事に発振してくれました。^^;;;
入力に抵抗を入れたら止まるのですが、ゲインが
目減りして計算すると2.5段分になってしまいます。

では2段にすると。。。
抵抗を入れなくても発振はしませんがゲインが
70dBを切るくらいです。
ま、xtalフィルタの後のポストアンプと検波段に使う
NE602ANの内蔵アンプでゲインはそこそこなのですが、
AGCのダイナミックレンジは65dB程度となります。
3段で100dB程度は見込んでいたのですが。。。
ピンATTにするか悩ましいところです。

以前元気の良いフォワードAGCのTRを使った時も、
3段では見事に発振し、デカップリングやシールドに
手こずり、最終的に最後の1段を別基板としてなんとか
収まった経験がありますので、今回もそのように
やり変えてみます。

デカップリング

発振を止めるためにいろいろやると、デカップリングとは
何者なのかよく分かります。
単純にアチラコチラにバイパスCをぶら下げても
効果は運任せで、うまく行く時もありますが、逆効果で
更に派手に発振してくれたりで、楽しませてくれます。
って、本当は全く楽しくはないのですが。。。^^;;

例えばIFだとアンプの電源供給は出力のIFTの
コールドエンド(またはセンタータップ)から行い、
電源側に高周波が流出しないように、流れ出ようとした
高周波をバイパスCを通してグランドに落とます。
その後抵抗を通してアイソレーションを確保してから
電源ラインにつなぎこまれています。
IFアンプが多段の場合、電源ラインのあちこちに
バイパスCをぶら下げてアイソレーションを取らずに
それらが直接配線で接続されているものをたまに
見かけろことがあります。
要はデカップリングをしていないのですね。
バイパス効果だけを見れば同じ値のCが1個ぶら下がれば
6dBの改善ですが、デカップリングをしないがために
他段へ信号の一部を渡してしまうことになる弊害が大きい。。
デカップリングをしないとその段と他の段のバイパスCは
直接接続されるため、配線などにより幾分インピーダンスが
高くなるものの、かなりの量が他段の方にも流れようとする、
つまり高周波的に結合(カップリング)させてしまう
可能性が有るのです。
ゲインが小さいアンプでは弊害にならない場合もあり
そういった回路でも成功するため、これでも良いと
思われがちですが、同一周波数で1段35dBのアンプを3段重ね、
なんて場合は通常のデカップリングにもう1段重ねるくらいの
気持ちでやらないときっと悲惨なことになります。

デカップリングの実際

デカップリングするのは簡単で、結合させたくない
バイパスCの間に数10Ωから100Ω程度の抵抗や
相当するインピーのインダクタを挿入します。

例えば10MHzに対し0.01μFのXCは約1.6Ωです。
(ESR・ESLは無視しています。)
バイパスC間にアイソレーション用として50Ωの
抵抗を入れた場合、流出した高周波電圧はほぼ
その比(1.6:50)で分圧されるため、およそ30dBの
アイソレーションが取れることになります。

当然抵抗に流れる電流により電圧降下がありますが、
10mA流れたとして0.5Vのドロップです。
IFアンプあたりはその程度の電圧効果に対し、それほど
シビアではありませんが、電圧を落としたくないシビアな
回路ならインダクタにします。
10MHzだと数μHでOKで、たとえば2μHでもXLは126Ωですから
アイソレーションは38dB取れます。
アイソレーションを欲張ると巻線の直流抵抗が高くなり
供給電圧がドロップしてしまい本末転倒になってしまい
ますからほどほどにしましょう。(笑

40dBの電圧比はちょうど100倍ですから、1.6Ωに対し
抵抗なら160Ω、インダクタなら2.55μHといったところです。
ちなみにFB801に線を通しただけ(1ターン)の場合の
アイソレーションは27dBですから、10MHzで2個も挿入
しておけば十分効果が期待できます。
またAGCラインの高周波が乗っかればそのまま入力
されてしまうので当然デカップリングは電源以上に
頑張らなくてはダメです。

なお例として0.01μFで計算しましたが、電圧比が
アイソレーションになるのならバイパスCを大きく
すれば良いはずです。
0.1μFと50Ωなら計算上は50dBも取れます。

キャパシタのf特

更にキャパシタ自体の周波数特性も考慮しなくては
いけませんので、コトはこう少し複雑で計算上のXL
のみでの振る舞いではなくなります。
キャパシタには等価直列インダクタンス(ESL)があり、
そのインダクタンスとキャパシタンスによる自己(直列)
共振周波数(SRF)以上の周波数ではESLが支配的になります。
ESR・ESLについては以前ポストしているので詳細は割愛
しますが、要は低い周波数からSRFまではキャパシタとして
振る舞うので周波数が高くなるとインピーが下がってくけど
SRFを堺にそれ以上の高い周波数の動作はキャパシタではなく
インダクタとして振る舞います。
インダクタですから今までとは逆に周波数が高くなるに連れ
インピーも高くなります。
これ以降のインピーはXCの計算では出てきません。

SMD(表面実装型)積層セラミックCの容量とSRFから
計算してみると、ESLは0.001μH程度のようで、0.1μFだと
SRFは15MHzあたりにあり、その周波数においてはインピーが
0.01Ω程度とESRも実に優秀です。
10MHzでの実測では0.1Ω程度となり0.01μFの実測値のちょうど
1/10程度です。

ではこの0.1μFをが1Ωになる周波数は?というと
下は1.5MHz、上は100MHzを超えるのでいろいろな周波数で
使えそうに見えますが、拙生は気分的に?SRFより低い領域を
使うことに決めています。
つまり20MHzあたりまでは0.1μF、50MHzまでは0.01μFと
昔からその値が頭に叩きこまれているということです。
これはキャパシタ単体の話で、パラレルの合わせ技であれば
f特に神経質になることから解放されます。
ESLだけでなくESRの呪縛からも逃れられます。

適当人間のデカップリングの技?

キャパシタのf特などが分からない、とか0.1か0.01か
どちらが良いか分からないし調べる気もないという
拙生同様またはそれ以上にモノグサな方は、両方とも
パラにしてグランドに落としちゃいます。
単体よりバイパス効果も上がります。

広帯域アンプでは、低周波(DCを含む場合も有る)から
高周波のかけてのバイパスとするときは、100μFとか
大きな値から0.1や0.01、更に0.001μFなどをパラに
することで対応しますが、他段とデカップリングするときは
インダクタは不向きであり、特にDCを扱うときは抵抗を
使うことになります。

IF3段の場合は電源供給を真ん中のアンプに行い、
デカップリング用抵抗を挿入して前後のアンプに
供給すれば電圧のドロップは軽減できます。

がっちりシールドする場合の拙生流は両面基板を使い、
外側に電源やAGCののパターンを作ります。
ちょっともったいないけど貫通Cを併用して引き出せば
発振しないことが分かりました。
これは友人に作ってあげたスペアナログアンプの部分で、
以前派手に発振させてしまった2SC1856の3段の経験から
試してみましたが一発で安定したものが出来上がりました。
適当人間の技ではなく適当ではダメという端的な例かも
しれませんね。。。
これは人様の頼まれごとなので多少面倒なことも頑張って
やりますが、自身のものはきっとやらない。。。
別基板使用でオ・シ・マ・イでしょう。ww

ま、1段30dB以上のアンプを多段に重ねる技術が習得
できれば、後は何も怖くないですよね。w

ちなみにバイパスC間のアイソレーション素子は必須なので
時々書きなぐる回路図では省略されていることもありますが
実装時には必ず取り付けてあります

オマケ

今回のIFは4.75MHzですのであまり気にしませんが、
18MHz台の時はパターンの作り方でもかなり違いました。
しっかりとデカプリングしても何故か不安定でいろいろ
試したら、適当に作った貼り付け用ラウンドの形状が
台形というより三角形に近い先細りだったため、
インピーダンスの不連続により発振気味になったという
極めて稀なケースもありました。
AGCラインをラウンドではなく配線にしてみて、電源ライン
となるパターンに近づけると、ホワイトノイズが増加したり。。。
いろいろ勉強になります。(笑

高い周波数だとインピーにシビアなポートへ繋がる
パターンは、ストリップラインとして計算するとか、
インピーの不連続を積極的に利用してマッチッチングを
取るなどの技もあります。
パターンも何を並行させてよいのか、何をグランドとの
容量を多く(パターン面積を大きく)、または少なくすれば
良いかなど、いろいろな要素がたっぷり詰まってます。

パソコンなどに使われているプロードライザという
デカップリング用デバイスがあり、周波数特性が低域から
広域までブロードで非常に優秀なのですが、我々が
入手できるものは1000円前後と結構お高い。。。
内部は多層基板で実装しているのですが、結局パラに
しているだけの話ですから、合計でわずか数10円の
抵抗とキャパシタで、十分実用になるスペックが
確保できるためまったく導入の予定はありませぬ。

なんとなく書いていましたが気づいたらすごい長文ですね。。。

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