反射波は何処へ?

拙生が言う反射波全部が損失とはならないという
ことに噛み付いた御仁がおります。
そんなに食って掛かることないのにと
思うくらい勢いでした。。。(笑

V/Uのアンテナ製作をする御仁には弟子がいて、
その弟子たちにVSWR=1.5だと4%のロスと
教えていたらしいのですね。
某所でお弟子さんのうちの一人と話した時に
拙生が全部はロスにならないと言ったわけです。
お弟子さんは先生に、アイツがコウ言ってる。
どっちが本当?とご報告がてら質問をしたらしい。
それで拙生と顔を合わせたのが百年目。。。
ここぞとばかりにまくし立てられました。^^;;

結局分かったのは、御仁は定在波の原理をよく
理解していないということでした。
一応説明を試みたものの、ハナッから聞き耳は
持っていなかったようでありますが。。。

以降、聞く耳を持っている方だけ読んでください。

定在波は進行波と反射波の干渉で生成されます。
進行波と反射波の位相がズレていても、振幅の
大きさみが一定のところで変化するため定在波と
呼び、これは反論しようのない物理現象なのですよ。

送信機側へ戻った反射波はどこへ消えるのでしょう。
すべてがロスになるならどこかで消費していなくては
理屈に合いません。
VSWR1.5のとき1kW出力で4%の反射なら40Wです。
送信機で全部消費?いえいえ送信機では一部は吸収
するものの一部が反射するんです。
進行波→・アンテナからの反射←・その反射の反射→・・・
夫々の位相がズレていても定在波は発生します。
つまり一定のところで振幅の大きさだけが変化する
波ってことです。(しつこいか?)

では伝搬路(同軸ケーブル)を周波数の波長に合わせた
電気長にするとどぉなるのでしょう。
位相を合わせることになり、その場合は共振ですから
定在波の振幅は位相がずれているより大きなものになります。

伝搬路長で位相を合わせた後送信機の後ろにアンテナ
・チューナーを挿入してマッチングを取ります。
送信機とアンテナチューナー間で反射が起きないように
調整するということは、40Wの反射波がチューナーを
熱するわけではなくアンテナ側に全反射しているのです。
試しに送信した後チューナーの各部に触れてみてください。
きっとひんやりしているでしょう。
あ、送信中は絶対触れちゃダメですよ!ww

40Wは位相を合わせてアンテナ側に全部追い返される
ことになり、アンテナに届いた分の96%は電波として
出てゆくのです。
その反射も同様な振る舞いを繰り返します。
結局進行方向のものはほとんど電波として出て行くのです。
ただし伝送線路損失分は目減りします。

仮に伝送路に3dBのロスがあった場合を考えます。
1KWは半分ロスってアンテナに届くのは500Wです。
反射がなければ500Wはすべてアンテナに供給されます。
VSWR1.5で4%の反射があった場合500Wの4%は20Wです。
20Wの反射波は送信機に戻るまでに10Wとなります。
10Wがアンテナに追い返されるまでに5Wになりその
4%の0.2Wが送信機側へ戻ります・・・以下繰り返し
ま、0.2Wやそれ以降の小さな数字は無視できます。
つまり480+4.8+=484.8(W)となります。
500Wと比較して-0.1323dBですね。
反射が全部損失となるならば-0.177dBとなります。
ちなみに送信機の後ろに挿入したSWRメータでは、
1KW出しても反射波は往復の損失で10W程度にしか
見えないので実際にはVSWR=1.5が1.2の表示となります。

もちろん3dBロスで運用されている方は少ないでしょう。
10mバンドで8D-2Vを100m以上引っ張らないと3dBの
ロスにはなりません。(笑
10D-2Vを50m引っ張ってもロスは1dB程度で、もっと
低い周波数ならロスも少なくなります。
1dBで計算すると約20%のロスとなります。
反射がなければ800Wがお空に・・・
VSWRが1.5だと約788Wで-0.066dBとなります。
全部損失なら-0.110dBです。
VSWR1.9で10%の反射だと約771Wで-0.164dBですが、
全部損失にすると-0.458dBになってしまいます。
これらを見てお気づきと思いますが、伝送線路のロスが
少なくてVSWRが高い場合に輻射効率の改善が大きい
ということになります。

定在波型のオープンフィーダ(同調給電)でのアンテナ製作をされた
経験のある方なら簡単に分かっていただけるはずです。
フィーダ長を調整して定在波を積極的に活用するのです。
電圧給電型のアンテナならかなり高いインピーダンスに
なりますのでよく使われた600Ωのハシゴフィーダーなら
VSWRは10なることもあり得ます。
じゃあ反射波が670Wあるからアンテナからは330W分しか
電波として出て行かない??
決してそんなことありません。
今のダイポールなんかと比較しても効率はほとんど
変わらないでしょうね。
というのはハシゴフィーダはロスが少ないからなんです。

また同軸ケーブルの組み合わせを使ったQマッチなんて
ロスだらけでもっての外ということになりませんか?

**** ここまでの結論 **************

同軸ケーブルとアンテナのマッチングが取れていれば、
反射波として返ってくることはなく、定在波も発生
することはないのですが、反射があって定在波が立つことが
避けられないのなら、それも積極的に活用しちゃいましょう!
ということであり、同軸ケーブル長やアンテナ・チューナー
での調整はアンテナの輻射効率の向上に非常に有用である
ということであります。

***************************

アンテナ・チューナーについても誤解があるようで、
接続するアンテナ側が20Ωだとして送信機の50Ωに
マッチングを取った時に、御仁の説だとアンテナ側が
20Ωで終端されていなければおかしな話になります。
20Ωで終端されていたらそれこそ送信出力全部が
消費されてチューナーが1KWの電気ストーブに
なてしまいますってば!!www

それこそ同軸ケーブルでのQマッチを考えてください。
電気長λ/4の50Ωケーブルの片側を25Ωで終端すると
反対側は100Ωに見えます。
100Ωの負荷をぶら下げても25Ωとマッチングしますよ
と言うことであり、物理的に芯線と外部導体はオープンに
なっていて、100Ωの抵抗で終端していると言うこととは
全く違うのです。
ちなみにこの同軸使用のQマッチも定在波による
インピーダンスを積極的に活用しております。

ふぅー。。この手の話は強烈な反論が多いので
ちょっとムキになって書いててしまいました。^^;;
次に反論が多いのは・・・
反射波はノーマルモードであり、同軸ケーブルから
電波として輻射されることはない@粗悪ケーブル除く
というやつですかね。(笑

アナライザなどで測定の際、シャック側でもアンテナ直下と
同じ測定値がでるよう、同軸ケーブル長を予め使用周波数の
λ/2の電気長x整数倍にセットしておけば、位相合わせは
すでにバッチしです。@インピー合わせのみ必要

注意 同軸ケーブルはオープンフィーダのようにVSWR8
   だとか10で使用するような想定をしておりません。
   芯線と外部導体の間隔が狭いため、大きな定在波が
   立つと絶縁破壊の可能性もあります。
   上記はVSWR2とかせいぜい3以内のお話であります。

   あくまで輻射効率を上げるという話であり、
   アンテナ自体のスペックに寄与するものでは
   ありません。

HOME

おすすめ