スタックについて

数多くHFアンテナをあげて調整し、
最近はその結果を反映したデザインが
確立してきた拙生ではありますが、
スタックアンテナの自作はホンの数例しか
ありません。

14MHzの4エレ八木アンテナスタックでは、
下段のアンテナは固定だったので、シングルとの
定量的な比較は、引き込んだ同一長のケーブルを
切り替えて、向いている方向から飛来する
安定した信号を受信しながら、
スタック・上段アンテナのみ・下段アンテナのみで
数値をとりました。
スタック間隔はλ/2(10m)。
上のアンテナが約30mでした。

その時思ったのが、スタック状態で
上段のみ使用した時は、単体で30mに
上げていた時より良くないってことです。
共振した(または共振周波数に近い)エレメントが
近間にあるのですから当然のことなのでしょうが、
その時点では参考文献も見当たらず、
スタックにしたこと自体が、同じアンテナが
2本入手できたので試してみるか、程度でしたので、
下段のアンテナは1度も回転することもなく、
1週間で2本のアンテナは叩き下ろされ、
欲しい人が現れたのでお嫁入りして行きました。

しかし、その時のことがずっと気になっていた
拙生は、50MHzの7エレが格安で2本手に入った時、
再度試すことにしました。
当時50MHzの運用は全くありませんでしたが、
免許用にIC-575を所有していましたし、
25MHz以上であれば多くの業務用測定機類が
使えるのでやる気が起きたというわけです。

まず当時4本上がっていたタワーやパンザーマストの
うちの3本の中心に7.2mのタワー(1ユニット2.4mの
タワーx3)を建てました。
ルーフタワー宜しく、2段ステーを3本のタワーに
縛り付けるという仮設状態です。💦
(CD社のNタイプ上部は、3段目がテーパー状
なのでまるでルーフタワーのよう)
ガス管の50Aを使用しましたから、ベアリングから
4m弱は確保されます。
F/Bの測定の為、予備として常備してあった
ローテータも取り付けます。
そこから5波長(30m)離れたところにある納屋に
3段のスライダーを建てかけてダイポールを上げ、
業務用アナログ電測計で測定しました。

IC-575を電測計の横で送信し、30m以上の2本の
同軸ケーブルでアンテナに供給するため、
送信側・測定側とも、コモンモードへの対策は
必要以上に神経質に成らざるを得ませんでした。
0.1dBの差をアナログ電測計で確認しようとすれば、
針2~3本分の振れですから、コモンモードで
誘起される電流は致命的ですから。

最初に1本のアンテナをベアリングから3mの
ところに上げて、電測計の測定値が60dBμになるように、
IC-575のパワーを絞ります。
アンテナをバックに向けてF/Bも測っておきます。
コントロールケーブルは短かったので、回転させるのに
30mを行き来することになりましたが。。。

全く同じアンテナをベアリングのすぐ上に
上げて、3mの間隔のスタックアンテナとします。
同じ長さのケーブルで給電しているので、
スタックのときは、手元でQマッチ用の75Ωケーブル
λ/4(x速度計数)で約100Ωにステップアップし、
それをパラ接続で50Ωとマッチングをとります。
7C2Vだとジャスト1mで切って、両端にコネクタを
付けると、測定なしでもそんなに狂いはなく
使えるのでお試しあれ。
この実験時はQマッチ用の電気的λ/4のみならず、
30m以上引っ張る2本のケーブルも、電気的λ/2の
整数倍になるよう、スペアナ・リターンロス
ブリッジで測定したものを使用しました。
ちなみにディップメータでの測定は結構
不正確であったのに対し、デリカのアンテナ
アナライザーはほぼ同じ長さとなり、お値段
なりに優秀でありました。

下段のアンテナを付けた状態で、上段のアンテナン
のみに給電すると、やはり測定値は1.3dB落ち、
F/Bも3dBほど悪化しました。
やはり悪いほうに影響してるってことは明白ですね。

で、スタックで給電すると、上段のみの
時より2.8dBアップします。
つまり単体で上げた時と比較すれば、約1.5dB
アップですね。
またもや30mを往復して測ったF/Bは、今度は
かなり良いです。
2本上げて上段のみの給電時より7dB、
つまり単体時より4dBもです。
いくら理想的な想定条件でなかったにせよ、
この数値は無視することはできないと思います。
スタックにするとゲインは上がるが、F/Bは単体時と
同じであるという記述しか見たことがなかった拙生には、
目から鱗でした。

ちなみに単体で上げた時のSWRはさすがに
メーカ製だけあって、ベアリングのすぐ上で
1.1程度、3m上げると1.1以下(1.05位)です。
スタック状態で1本に給電すると、
上下アンテナとも1.3以上になります。
思い切ってスタック状態で最適化
することにしました。
と言っても、やみくもにいじれば訳が
分からなくなるに決まってます。
スペアナとリターンロスブリッジで、
どないなってんの?と探ってみると、
純抵抗分は低く、リアクタンス成分も
容量性になってます。

そこで下側のアンテナのみ下ろしては
エレメント長とスペーシングを調整し、
SWRが良くなりゲインも上がったところで、
上のアンテナも全く同じサイズに
すること数度。簡易的ではありますが、
なんとか追い込みました。
エレメント長だけでは追い込めず、
スペーシングがかなり変わっりました。
まだまだ追い込む余地のある段階でも、
上段・下段のみの給電におけるゲインは
単体時よりも0.9dB落ちまでとなりました。
F/Bは残念ながら変化はありませんでしたが、
きっとスタックにすると上がってくれるだろう
と気にしないことにしました。。

結果的にスタック状態の1本のみ使用時から
スタックにすると2.8dBアップ。
単体で上げた時より1.9dBアップで、
F/Bも期待通り4dBアップです。
もちろん半端な最適化ですから、
もっと良くなる可能性は大ですが、
納屋に建てかけたスライダーと、
知識のない人には訳の分からない
測定機類が邪魔くさいとの苦情で、
実験あえなくは終了するはめになりました。。。

短いしかも中途半端な実験でも分かったことは、
スタックにするにはスタック用アンテナとしての
最適化が必要であること。
最適化の見返りとして、λ/2の間隔でも2dB超えの
ゲインアップが見込めそうなことと、
環境によってはF/Bの大幅なアップが見込める
可能性があること。等々です。

後日(というかごく最近)この手の話が出て
思い出し、シミュレーションソフトで
検証してみましたが同様な結果がでて、
最近のシミュレーションソフトの優秀さに
びっくりしています。

6m8エレメント2列2段

どうです、少しは参考になりましたでしょうか。

参考までに、以下はx2とx4のスタック用ケーブルです。

 x2

上記のままだと、スタック間隔が電気的λ/2以上とれないので、
アンテナから50ΩケーブルでQマッチセクションまで伸ばすか、
75Ωケーブルを電気的3/4・λとします。

 x4

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