比誘電率による短縮率
先日仕事関係で伝送速度の話がでて、
その中でつい比誘電率の小さな
絶縁体で作ったケーブルを使えば、
いくらかでも早くなると言ったら、
それはどうして?と聞かれ結構長時間
説明するはめになってしまいました。💦
で、その内容をアマチュア無線に馴染み深い
同軸ケーブルに置き換えて書いてみますが
余談の部分は上記の説明時にはなっかた話です。
他の部分でも追加した部分がありますが、
一番時間を掛けて説明した位相速度の詳細は
割愛してあります。
伝送経路における伝搬速度(Vp)は以下の公式で算出します。
Vp=(3*10^8)/√(μs*ℇs)
(実はVpが位相速度なのですけど。)
同軸ケーブルの材料には磁性体が使われていないので、
μsは無視(μs=1)します。
厳格な方は3ではなく2.9979とかで計算するみたいですけど、
拙生は実にアバウトですから。。。
【*D-2Vタイプ】
絶縁体に使われているポリエチレンは比誘電率ℇsが
2.2~2.4ですが、*D-2Vなどに使われている短縮率0.67から
逆算すると2.227となります。
メーカによっては0.66(ℇs=2.229)となるものも
ありですので、若干密度等が異なるのだと思います。
【*D-FBタイプ】
*D-FBに使われる発泡ポリエチレンは計測上で短縮率が
0.79でしたので、比誘電率は1.602が算出でき、一般的に
言われてている1.6~2.0の範囲内の端っこになんとか
引っかかってますねぇ。(笑
(短縮率≒√ℇsの逆数 または ℇs≒短縮率の2乗の逆数)
余談
内部導体の外径(d)と外部導体の内径(D)、
それに絶縁体の比誘電率が明らかな場合は、
特性インピーダンスだけでなく静電容量も計算できます。
C=(55.63*ℇs)/ln(D/d) 【pF/m】ですが、
自然対数(ln)ではなく、常用対数(log)で計算したいときは、
C=(24.16*ℇs)/log(D/d)【pF/m】が概算となります。
分母にあるlog(D/d)が小さい(D-d間が狭い)ほど、
また分子にある比誘電率の値が大きいほど
静電容量は大きくなるということですね。
5D-2Vと10D-2Vのように太さが異なっても、
1mあたりの静電容量が約100pFと同じになるのは、
使用絶縁物の比誘電率とD/d値が一緒だからに
ほかなりません。
ちなみに75Ω系の*C-2Vは67pF/mですね。
絶縁体が発泡ポリエチレン使用の10D-FBを計算してみると、
C=(24.16*1.6)/log(10/3.5)≒84.8pF/mとなりましたが、
メーカ発表の83nF/Km(=83pF/m)とほぼ一致します。
前述のようにあくまで概算ですが、精度は
そう悪くないようです。
特性インピーダンスZoの公式
(138/√ℇs)*log(D/d)は
あまりにも有名で説明の必要もありませんね。
仕事関係の場でこの手の話を避けたのは、
平行2線なら大丈夫ですが実際に使うツイスト多芯数線に
関する具体的な知識が乏しかったからです。💦💦
話は戻ります。
このように短縮率か絶縁体比誘電率のいずれかさえ
分かれば、もう一方も計算できます。
厳密には内部導体が単線か撚線、外部導体が
アルミ箔や銅箔、パイプ以外のもの、例えば
網線などでではそれぞれに補正値があるのですが
たいした補正ではありません。
例えば単線の実効内部導体外径を1とすると、
ザックリですが7本撚線では0.94とか12本撚線以上
であれば0.98になります。
また外部導体に網線を使用した場合、
実効誘電体外径(=外部導体内径(D))は
+1.5mmの補正値を持ちます。
これも絶縁体のℇsと特性インピーダンス
50Ωが一緒なら、単線・撚り線やアルミ箔・網線の
違いがあろうがなかろうが、補正値を含めてD/dが
決定されているわけで、同軸ケーブルを自作するときや
特性の分からないケーブルの断面を調べた結果から
計算するときなど以外は特に意識することも
ないでしょうけど、知っておいて損はありません。。。