咬み合わない整合の話し

年が明けたと思ったら早2月。
光陰矢のごとしですねぇ。
矢の先でおしりを突かれないように頑張らねば。。。

用事で立ち寄った某所でアンテナチューナーの話をしていたら、
なんか噛み合いません。
よくよく聴いてみるとこういうことです。
例えば73Ω+j43Ωというインピーダンスを持つ負荷に
50Ω出力の送信機(50Ωの電源)との整合をとるには
チューナーの負荷側を73Ω+j43Ωに調整するするという
意味合いのことを言っていることが分かりました。

それは間違いです。
負荷が73+j43Ωのインピーダンスならチューナーの
負荷と接する点では73Ω-j43Ωでなければいけません。
リアルパート(純抵抗分)は50から73Ωに持ちあげれば
OKですが、jパートは+−が逆である、つまり送信機側と
負荷側のインピーダンスが複素共役にあることで
jパートが打ち消し合って初めて整合が取れるのです。
だから噛み合わなかったんですねぇ。

もう一つ噛み合わなかったのは。。。
73+j43Ωはλ/2ダイポールアンテナの理論値ですが
長めに張って切り詰めて調整しようとしたら、
長めな筈なのにアナライザーの値が32Ω-j70Ωと
なってしまい、エレメントを足してみたがうまく
調整が出来なかったという話し。

これもよく聴くと、アンテナから引き込む同軸長を
全く考慮していないことが分かりました。
何度も書いている通り拙生は同軸ケーブルの
引き込みを位相を考えて予め電気的λ/2の整数倍に
しておくことでシャックで測定してもアンテナ給電部と
同じインピーダンスが計れまるようにします。
(同軸ケーブルのロスは無視する)
アンテナがマルチバンドの場合は7・14・28の用のように
偶数倍であれば7MHzでの電気的λ/2偶数倍であれば他の
バンドでも使えるのですが、7・21は3倍・6倍などの
倍数でなくてはいけません。
14/21/28のトライバンダ−を例に取ると、14MHzにおいて
電気的λ/2の偶数倍にした場合は28はそのままでOK.
21を測るときは同軸ケーブルを延長して電気的λ/2の
整数倍になるようにして測定します。
これを無頓着に引き込んで偶然λ/4の奇数倍の
長さになってしまったらどぉでしょう。
73Ωは34Ωに変換されjパートも+−が逆転します。
また地上高がλ/2以下では90Ω程度になるので
30Ω以下に変換されてしまう可能性もあります。
程度問題ですがその間の長さでも正確なインピーダンスは
測定できないのです。
32Ω-j70Ωを見てアンテナが短いと判断するのは
早計であり全く逆の調整に走る可能性もあるのです。
同軸ケーブル長なんて百も承知かと思って話していたので
こいつも最初は噛み合いませんでした。

ま、ネトアナまで用意せよとは言いませんが、
せめてアンテナを自作するなら簡易型でもアンテナアナライザ
くらいは用意して、長さを考慮した同軸ケーブルで測定することです。
ちなみにVSWR計は位相を全く見ない測定器であリ、分かるのは
進行波と反射波の大きさの関係だけですので、特定条件下で
なければ共振周波数すら分かりません。

もう一つ。
整合を語るならスミス・アドミタンスチャート位は
ある程度理解すべきだと思います。
もちろんイミタンスチャートまで行き着けば鬼金
(オニニカナボウの意)ですよね。
複素共役なんて面倒くさそうなやつも視覚的にすぐ
理解できると思います。

昔は伝搬のプロフィールやチャート類は手書きで
チマチマやったものですが、現在においてはパソの
アプリで簡単に作図ができてしまい、実に便利な
世の中になったものです。

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2件のフィードバック

  1. OQQ より:

    まことにありがたいお言葉、痛み入ります。「基礎から学ぶアンテナ入門」を読んでいたところです。アンテナアナライザーは持っていましたが、イマイチ理解がなかったです。土日で1/2λx短縮率の同軸を準備して、やり直します。謝謝、OM
    ワイヤアンテナの話ですが、ANT長を決めるときは、まずディップメーターで共振周波数を求めて、次にインピーダンス整合を行うという順序でよろしいですか?

  2. Qsaku より:

    次回書こうと思っていましたがアンテナアナライザーにも種類があります。
    スカラという測定方法とベクトル測定があり、インピーダンスが正確に
    計れるのはベクトル測定です。
    ベクトル測定では直読またはなんだかの方法で±jの値が読めますが、
    スカラ測定はフェーズ情報を抜きにしてインピーダンスの絶対値(Zmag)
    のみを読んでいるので、単位にインピーダンスの(Ω)を使用するのは
    間違いであります。

    整合のやり方はいろいろあり、共振でjパートを無くしてから
    始めたほうが楽な場合(お持ちの測定器による)は順序は正解です。
    ベクトル測定ができる測定器の場合はどちらからでも容易にできます。

    なお、同軸長は先端に75Ωなどの抵抗を付けて、反対端でアンテナ
    アナライザーで計った時75Ωに見えるところが電気的λ/2の整数倍です。
    逆に33.3Ωに見えるところが電気的λ/4の奇数倍の長さになります。

    出かける前なので帰ってきてからもうちょっと詳しく書きますね。