への5番@頼まれ物

依頼されたRFデッキの下回りの修理や
ローラーインダクターとシロッコファンの交換、
風抜き用大型ファンを上蓋のところに取り付け等々、
作業が進んだのでそろそろ通電してエージングと
思いましたが、気になることを発見。

このへの5番はかなり改造してあります。
オリジナルの高圧回路はチョーク入力で平滑コンデンサは
オイルコンなのですが、コンデンサー入力に変更してあり、
電解コンデンサの12シリーズになっていました。
気が付いたのはコンデンサのみをシリーズにしていること。
通常この部分のシリーズ接続では、抵抗をパラに抱かせて
分圧される電圧を均等にします。
でなければかかる電圧は静電容量により不均一となります。

静電用容量は同じものを使用しているからいいんじゃない?
って、そうはいきません。
コンデンサには容量抜けという経年劣化があります。
古いものを測ってみると表示の容量の半分以下なんてのもある。。

経年劣化の最大の要因のは熱です。
特にへの5番のように狭い筐体に押し込めたものは、トランスの
発する熱などでやられちゃいます。
拙生が球だけでなく電源の冷却にも気を使うのはこのためです。

容量やリーク電流値がバラバラになると、何も対策していない
単なるシリーズ接続では、それぞれにかかる電圧もバラバラです。
十分余裕のある耐圧のものを使用してあれば良いのですが、
耐圧450Vの12シリーズですから5400Vがマックスですね。
例えば4800Vだとしたら均等に分圧されれば1本に400V。
50Vしかマージンはないので、バラつきにより危険領域に
突入するものが出てくる可能性大ですね。
静電容量と電圧の関係を表すお馴染みの V=Q/C です。
シリーズでは容量の違ったコンデンサでも、各両端は
+Qと-Qという同じ値の電荷になります。
式から分かるように静電容量と電圧は反比例の関係にあり、
静電容量が小さいほど高い電圧が・・・つまり劣化して容量抜け
したものに更に追い打ちがかかるということなのです。

当然抵抗をパラに入れることにしましたが、せっかく組み上げた
ものをまたばらすことに・・・けっこう面倒でした。

DSC_0010
フィラメントトランスなどをどけて作業中。

DSC_0011
取り付け終了。
右側の黒い丸い奴は強化したシロッコファン。

パラにする抵抗の適正値はというと、電解コンデンサの
リーク電流より大きな電流が流れる値でなくては意味がありません。
リーク電流の10倍以上流すことが推奨されています。
アンペアオーダーの電源の数ミリAは無視できる値ですので、
拙生は常温で50~100倍流すことにしています。
例えばリーク値が20μA、100倍あれば2mAですね。
電圧が400Vなら200KΩということです。
この場合1本につき0.8W、12本で9.6Wの熱が発生するので、
通風には十分注意しなくては、付けたことによる熱劣化で
藪蛇になりかねません。
このアンプには電源部にもアキシャルファンが取り付けてあり
通風に気を使っていますので大丈夫です。

*常温で・・・とあるのは温度が20度で20μAでも、60度なら
 2.5倍程度流れます。
 (50μAに対して2mAはまだ40倍を保っています。)

よく見るのは470KΩという値です。
電解コンデンサも新品の時はリークが10μA程度(常温)と言われるので、
1mA流せば大丈夫かもしれませんが、経年劣化や温度環境を考慮すると
上記のような値が最適かと勝手に思っているのですが。
温度上昇を気にされる方は470KΩを使用すれば0.85mA流れ
消費電流は0.34W、全体で4.08Wとなります。
周囲温度環境などによりリークが50μAまで増加しても、
0.85mAは17倍以上なので、そんなに劣化するまではアンプを
使い倒すことはないよって方は470KΩでも大丈夫です。
その間の値で手持ちがあればそれを使えば良いでしょう。

*今回は270KΩ3Wの酸化被膜抵抗を抱かせました。

それにしても耐圧はギリギリで危険な値ですねぇ。
拙生は最低でも1.3倍、できれば1.5倍以上の耐圧を持たせます。
容量は470μFの12個シリーズで39.2μFです。
14個シリーズにしても33.6μFを保ち、耐圧6300Vになりますから、
もう2個も奢ってやればかなり安心な値なのですが・・・

さてこのアンプ。
通電テストをしようと球抜きで電源をオンしたら、オフディレーで
高圧をONにするタイミングで、主幹ブレーカーがトリップします。
分電している40Aやアンプ本体のブレーカは落ちないのですが。
突入電流対策はされているのですが、あまり効いていないのかも。
主幹のブレーカは他にも使っているからでしょう。
本日は時間切れなので、次回60Aまで大丈夫な第1作業場へ
アンプを持ち込み試してみましょ。

それにしても突入電流の防止はニクロム線を抵抗代わりに使い、
CRで時定数を持たせたものを豆粒ほどのTR(型式は表示が黒ずんで不明)で
ブーストして小型リレーをたたき、更にそれで大容量のソレノイドリレーを
叩いてニクロム線をショートするという凝ったものですが、もっと簡単に
できるのにと思ってしまいます。

   

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