本年最後今更聞けないシリーズ

本年最後のエントリです。
多少の長文をご勘弁ください。

トランジスタの回路を書いてベースにぶら下がる
2本の抵抗値を入れ込みながら直流電流増幅の話をしていたら、
その抵抗値はどのように決定されるの?と尋ねられました。

う~ん、そこから説明ですか。。。って感じ?
いろいろな説明の仕方があるのでしょうけれど、
ごく簡単に拙生流を説明しておきました。

増幅のクラスによってアイドリング電流は違うけど
わかりやすいので1mA流すことにして考えます。
コレクタ電流をある程度安定させるために、仮にエミッタ抵抗を
500Ωとすると、エミッタ抵抗においては0.5Vの電圧降下が
発生します。
ベース・エミッタ間ではダイオードと同様に0.6V程度の電圧が
発生するので、ベース・グラウンド間では合計した1.1Vと
なるわけです。
で、コレクタに掛かる電圧が9Vだとすると、コレクタ・ベース間には
先ほどの1.1Vを差っ引いた7.9Vとなります。
その電圧の比をなるべく崩さないように、抵抗値も7.9:1.1とします。
勿論比率が7.9:1.1ならどんな値でも良いわけでなく、ベース電流を
無視できる程度、具体的には10とか20倍(あるいはそれ以上)流すことで
安定させます。

ベース電流はどのように・・・って?
コレクタ電流を直流電流増幅率hFE(hfeではない)で除算した値です。
例えば2SC1815GRを例にすると、末尾のGRはhFEのランクですが、
実は200~400と大雑把です。
ですからあまり細かなことを気にしないでも良いということに
ほかなりませぬ。@内緒の話(笑
仮にコレクタ電流が1mAでhFEが200とすると、
ベース電流≒1mA/200で5μAとなり、
その20倍流すなら100μA。
電圧が9Vなら合成抵抗は90KΩですね。
90KΩを7.9:1.1で分割すると、ベース・コレクタ間の抵抗は
79KΩでベースグラウンド間は11KΩです。
通常はICをもうちょっと流すでしょうし、エミッタ抵抗の
増減によっても分割する割合も違ってきます。
例えば経験的にはノイズを少なくするためにICを抑えた場合でも
2〜2.5mAで設計します。
リニアリティのある大きめな出力をほしい時はアイドリングに
10mA以上流すことも稀にあります。

上と同じ条件でICを2mAとして計算すれば抵抗値はそれぞれ
半分にします。
実はそのまま同じ値でも10〜20倍の10に引っかかるので、
問題はないのですけど。。。

何倍流しているかなどは、いろいろな回路図を見て計算
してみてください。
結構アバウトなことが分かり安心できると思います。(笑
そんな目で見ていると回路図を眺めるのも楽しくなる?

ちなみに今までのお話は一番良く使われる電流帰還バイアス
と呼ばれる自己バイアス回路の発展形?であり、固定バイアスや
基本的な自己バイアス回路のお話しではありません。
この辺を語ると長くなるので次の機会に回路図付きで。。。
ということで。

さて、細かい話ですが以前半導体の立ち上がり電圧を測定
したことがあり、1.89mV/℃という正の温度特性がありました。
デバイスによって違いはあると思うので、シビアな回路設計を
されるときは使用デバイスにおける温度特性の予備実験を基に
補正値を出しておくとよいでしょう。
ついでに実際に使用するトランジスタのhFEも測定しておけば完璧です。

そう言えばhFEが測定できるテスタって少なくなってきたような。。。
しかしその気になればhFEの測定器は実に簡単に製作できます。

拙生の製作した回路


   いつもの通り机にあった紙になぐり書きです。。。

バラックで作ってあり電流計はTPを2台の同じテスタで測ります。
ICをIBで除算したものですので計算するだけで簡単です。
 ・ ポイント
   小電流域と大電流域をスイッチで切り分けています。
   例えば2SC1815あたりのよく使う小信号領域では
   R+VRは数10kΩ〜数100KΩあたりですが、許容コレクタ
   電流の150mAを流すには2〜3KΩ程度となります。
   500KΩや1MΩのVR一発でやってしまうと、低抵抗の
   部分がシビアで、かなりの確率で過電流を流してしまい
   測定トランジスタ憤死という事件に発展します。w
   で、まずはVRが0Ω(または低抵抗値)になっても
   憤死しないようにRを奢っておきます。
   小信号(通常使用する)領域は10KΩのR+1MΩのVR
   許容電流付近まで測りたいときは1KΩ+10KΩとしています。
   ただし1KΩでは1815の許容電流を若干超えるので、測定に
   時間をかけ過ぎるとオシャカになるので要注意です。
   オマケ1
   hFEを測定するときはVEBもついでに測っておきましょう。
   別電源でバイアスをかけるときの電圧の目安となります。
   オマケ2
   SC1815のような小信号トランジスタのみの測定なら
   ダイオードの立ち上がり電圧を利用して、最初から
   0.6Vや2シリーズの1.2V程度まで落としておきます。

これで手持ちの1815GRを40個測ったことがありますが、
hFEは平均250程度で、中には200もあれば300もある。
PPに使うやつは特性の揃ったものを使いたいため、
見つけたらヨッコしてあります。
真空管のペア球探しと一緒です。
結構見つかるもので40個でやめました。
手持ち全部はさすがに大変ですから。。。

ちなみにエミッタ抵抗が500Ωで、出力側のRLが
5KΩだと10倍の増幅となります。
オーディオと違い高周波の場合は抵抗ではなく
LCの同調回路などがぶら下がるので単純ではありませんが、
負荷Zが高い≒高い電圧を掛けるとゲインが上がる
という当たり前な理屈になってしまいます。
(ただし扱うのはhFEではなくhfeになる。
           @ hfe=⊿IC/⊿IB )

最初は拙生もデバイスごとに気を使い計算して定数を
決定していましたが、慣れてくるとデバイスとその使い道により、
周辺部品のおおよその定数は頭に叩き込まれるはずですし
そんなにシビアではないのでご心配なく。

種明かしすると、拙生は自分用の回路図を書いたら
分かりきった定数でも必ず回路図に一緒に書き込むことで、
人様の前でもためらわずに数値を書き込めるという
わけで一応努力はしているわけです。(笑
決して暗算でスラスラ計算しているという訳ではありませぬ。
と言いつつ上の回路図に定数は入れておりませんけど
自分用ではないので。。。ww

本年はお世話になりました。
拙作サイトへ毎度のご来訪を感謝しております。
皆様にとって素敵な2017年になりますように。

                窮@初詣準備中             

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