バターワースVSチェビシェフ

最近製作に勤しんでいることをこのブログで知って
自作派の知人から連絡がありました。
現在7MHzのAMトランシーバを計画中とのことで
その際に使うLCのLPFに表題のどちらを使うのが
良いかというお話でありました。
バターワースを採用したものが一般的ですが
チェビシェフのほうが減衰特性に優れていると
教科書に書いてあるため採用したほうが良いのでは
とのことです。

拙生がどちらを採用するか決定する基準は通過させる
電波形式によります。
確かにチェビシェフは少ない段数で減衰特性を稼ぐことが
可能ですが、実はリプル特性を犠牲にして初めて鋭い
減衰特性が得られます。
リプルがなくなるように設計すると、なんとバターワースと
変わらない特性になってしまいます。

ですからチェビシェフを採用する場合、CWのような単一
キャリアのようにリプルの有無に左右されない電波形式の
場合は選択することあります。
帯域が広い電波形式でリプルが存在しても、AMのような
アナログの場合はさほど問題なく使えちゃいます。
デジタル通信では帯域内に減衰特性のうねりが大きいと
ビットエラーレシオ(レート)の劣化に直結します。
 *たまにレートかレシオかを論議している場面に
  出くわしますがどちらも符号誤り率であります。

上記を読むとAMならチェビシェフでも良いように
取れますが、フィルタ特性で大事なのが群遅延特性。
帯域が広いと周波数により信号がフィルタを通過する
伝搬速度が異なるために入出力の波形が異なることに
なりそれが歪となります。
拙生がAMに使うならこの群遅延歪が少ないバターワースを
使用するでしょう。
つまり拙生の場合はCW以外はバターワース。。これが結論です。
(実はCWでもバタワース。。。なのですが。)

余談を少し

リプルを容認できるならチェビシェフのほうが段数が
少なくても鋭いフィルタが可能ですが、それなりに無負荷Qの
高い部品が必要になります。
また一般的な定数で段数を重ねると、偶数段ではIN・OUTが
同じインピーにならないという特徴もあるので、拙生は奇数段
でしか使いません。
インピーを同一(例えば50Ω)に合わせるのにあちこち定数を
いじるのは面倒ですから。。。

リプルを更に容認できるなら楕円関数特性というのがあります。
これは他のフィルタとは異質なもので、直並列回路の併用で
カットオフの周波数付近のみ鋭く大きな減衰特性を持たせます。
ずっと離れた周波数では他のフィルタよりも減衰量が小さいのが
特徴で、群遅延歪は大きくこれこそCWにしか使えないでしょう。
しかも結構複雑です。

逆に・・・リプルも群遅延歪もまかりならん!という場合には
ベッセル特性っていうのがあります。
過渡応答特性に優れていてリンギングやオーバシュートが殆ど
無いのですが、良いことばかりではなく減衰特性が緩いという
フィルターとしての致命的な欠点があります。
ベッセル特性は波形の整形や入力に対し忠実な出力波形が
求められるときに使います。

TRのコレクタやFETのドレインにぶら下げる並列同調回路は
同期同調特性といいますが、残念なことに減衰特性は今まで
述べてきたどのフィルタより劣ります。
その代わり群遅延特性に関しては最高です。
受信機のIFなどでは別途狭帯域フィルターが挿入されるので
全く問題はないのですが、RFで多少なりとも選択度を
稼ぎたい場合は多段のバターワースを採用するなど
一考を要します。

今日の結論

リプルや群遅延特性が比較的優秀ななバターワースを使用し
減衰特性は必要な分だけ段数を重ねる。。。
当たり前すぎる結論に落ち着きました。(笑

HOME

おすすめ