不人気だったSA612AN

SA612ANのどぉしようもないスペックが話題になりました。
なんでそんなのフロントエンドに使うんだい?と聞かれましたが、
使ってみるのは拙生の勝手でしょ?(笑

それよりATTで相互変調歪を軽減する話で気になったことが
あったのでちょいと書いておきます。

実際に相互変調歪に影響するのは主に3rdIMDの大きさです。
対数スケールのグラフにした時、基本波の傾きを1とすると
IMDは3です。(真数で言うと3乗倍)
つまり基本波が1dB増加するとIMDは3dB増加します。
逆に基本波を10dB落とすとIMDは30dB減少となります。
波形観測すると大幅な改善が一目瞭然であります。

10dBのATTを頭に挿入しても10dB大きな信号が入れば
同じことだろう?とおっしゃいましたが違うんですね、これが。
ATTを挿入してもATT分のIIP3(OIP3は一緒)が改善される
だけですので基本波入力が10dB増加するとIMDは元の
値まで増加します。
ですので一応そうだよねと同意はしましたが。。。

ただそれは測定上での話で、頭に狭帯域フィルターでも
入れない限り、アンテナを繋いだ受信機のトップには、
広帯域のBPFからすり抜けてくる多くの信号が入力されます。
耳で聞く信号は狭帯域フィルタで目的外信号が篩い落とされた
後なので聞こえはしませんが、トップにはその聞こえない信号も
含めたすべての信号や、それによって生成されるIMDが
合成されて受信入力電力となっています。
ですから実際はもっともっともっと過酷な状況なんです。
10dBATTで全信号が10dB、生成されたIMDが30dB落ちると
いうことであり、測定上の2トーンで観測しているよりずっと
効果が実感できることは間違いありません。

 ・狭帯域の前段では必要以上にゲインを稼がない。
 ・いらないゲインならぶっ殺してももったいなくない。

ATTをかましていたら弱い信号はどうする?
答えは狭帯域の後段でゲインを上げます。
IFでもAFでも良いのですが、RFに同様いずれも
歪やノイズの少ないものが要求されます。
無信号時にAFのVRを目一杯上げてノイズが少なく、
信号を入れても歪まないで聞こえるのが理想です。
AGCも重要でありダイナミックレンジが決め手になります。

IP3の極論
IP3の話もでましたが、端折って結論のみを。
IP3というのは実際にはありえない仮定の指標です。
入出力特性とIMDが飽和しないとして直線的に延長した交点。。。
入出力が直線=飽和しない==歪まないならIMDは存在しませんって。w
あくまで仮定の数値であってそれがが高かったらリニアリティが
良いはずという目安に過ぎません。

などと宣っておいて受信機トップにSA612ANはないだろうって
全くそのとおりであります。(笑
ただ分からないで使うのではなく、分かっていてもどの程度まで
使い物になるのかあえてやってみるということであり、間違いのない
他の選択肢も持ちあわせている上で撤退ありきの冒険であります。
より実用的な上位スペックを目指したい方は、フロントエンドは
ハナっから2SK125やJ310のパラ、またはパラプッシュで
DBMと組み合わせた構成にして、SA612などの使用はOSCの
プリミックスやプロダクト検波にとどめてください。

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