NF@Noise Figure

予測はしていましたがやはり来ました。
IPやIMD・NFについてもっと語れというご指摘です。
他にブログネタもないしまずはNFからいきますか。。。(笑

言い訳

拙生は仕事柄数式を扱うことは必須であります。
それらはパソコンや関数電卓に放り込んで
持ち歩くので、備忘録としてサイトに数式を
載せる必要はありません。
例外としてアマチュア無線に特化したもので
便利なものや、よく使う基本的なものでなものの
ご紹介は固定ページに載せています。
気分により使う時もありますが。。。
実は拙生にとって数式を並べての説明のほうが
ずっと簡単だと思っています。
きっと数式を並べて理解していただける方は
説明の必要もない方でしょう。
しかし数式に拒絶反応を起こすご来訪者も大勢
いらっしゃるでしょうから、この拙作サイトでは
なるべく数式を使わずに概要の説明を心がけています。
拙生の力量もあり、これってなかなか難しいのですよ。。。

しかしIPやIMD、さらにNFなどについてはそんなに
難しい式ではないので、ちょっとだけ説明してみましょ。
ただしNFは熱雑音を扱うのでボルツマン定数等が途中で
登場しますが、これらの説明は省きます。

概要

たぶん厳密に言うとそれは間違いでこうあるべきと
言われそうですが、なるべく分かりやすい概略を。

いかに弱い信号を受信できるかの能力の基準は
アンテナから入力のない状態で受信機単体の出す
雑音出力となります。
これより弱い出力となる信号は受信できません。
これが受信機のノイズ・フロアですね。

NF(Noise Figure→雑音指数と訳します。)

この受信機に信号を入れます。
例えばRFアンプなどで信号が増幅されるとして、
出力側のS/Nは入力側より必ず悪化します。
SとNが利得分だけ増幅されればS/Nは同じなのですが、
アンプ自体が発生させるノイズが加わるからです。
この悪化の度合いがNFなので、値が小さいほどNFは良好
ということであります。
これは多段で増幅するたびにノイズ・フロアが
持ち上がることをを意味します。

S/Nと異なるのはNFは基本的にノイズを熱雑音として扱います。
式中に絶対温度が登場しますが物理の世界において
絶対温度を使用することは珍しくありません。
摂氏-273.16度を絶対零度(絶対温度零度)といい、
原子(分子)の振動が全く止まってしまい、ノイズが発生しない
温度なのでこれを基準にするというわけです。

NFを入出力のS/Nで表してみます。

NF=(入力側のS/N)/(出力側のS/N)
    これを変形すると
 =(入力側のS/出力側のS)・(出力側のN/入力側のN)

更にこれを熱雑音で表すとで以下のようになります

NF=1/G・(出力側ノイズ)/kTB

   G:増幅率(dB)
   k:ボルツマン定数(JK^-1)
   T:絶対温度(K)
   B:帯域幅(Hz)

ポイント

(入力側のS/出力側のS)はまさに増幅率の逆数なので、
1/Gに置き換えることができます。

入力側のNはkTBに置き換えられています。

・kは面倒くさいことは省いて1.38064852E-23(E-23は10^-23)です。

・絶対温度なんて書くとなんか小難しそうですが
下の式を見て安心してください。(笑

   絶対温度=摂氏の温度-絶対零度
       =摂氏の温度+273.16 (K)
 
・帯域幅、つまり受信できる範囲のSとNで決定します。
 各々の選択性が各段のNFの決定に関与します。

上記のことで分かること注意すること

・NF値は1.0以下にはならないが絶対零度でない限り
 1.0にもならない。(必ず1.0以上ってこと。)
  送信アンプだけでなく受信機も冷やしたほうが・・・
  よほど高い周波数でない限り必要なし。
・NF値はゲインが大きいほど小さく(良好に)なる。
  これはNFだけの話で、NFのみを追求してしまうと
    IMD特性などを悪化させてしまう。
  またゲインを上げることによる出力側のNの
  増加があるので単純計算とはならない。
  そのため入力換算雑音電力で扱う。
・式だけ見るとkTBのTとBが大きくなるとNF値は小さく
 (良く)なると勘違いしそうだが、これも出力側のNが
 それ以上に増加するため逆に悪化する。
 帯域を狭くして聴くCWはノイズが少ない。

上述のように式だけ見てはだめで、TBの値により
出力側のNも変化することを忘れてはいけません。
  

余談

入力換算雑音(Input Referred Noise)

NFを語るときよく出てくるのが入力換算雑音レベルとか
入力換算雑音電力という言葉です。
これはアンプのゲインによりノイズが変化してしまうため
アンプのノイズ特性を評価する際に不都合であります。
で、アンプで発生した内部雑音を全部入力側のNとしてしまえ!
ってことであります。
基本的には出力側のNをゲイン分で割り算するだけですけど。

さらに入力換算雑音密度とは、出力側のNのスペクトラムを
解析して、入力換算雑音の周波数特性を表したものです。
これもその周波数におけるNをその周波数におけるゲインで
割り算したものです。
OPアンプでは入力換算雑音電圧密度の周波数特性は
ごく一般的ですね。

必要以上にNFを追いかけることは無意味で
そのバンドの特性や自身の環境に応じて必要な
スペックが何であるかを見極めることが大切です。
ゲインを取り過ぎのRFアンプはちょっとした信号で
過大入力となり歪んでしまい、それにより発生するノイズの
トータルを考慮しなくてはいけません。
NFを追求するあまりIMD特性などを悪化させれば
HFのローバンドあたりでは使い物になりませんよね。
逆にサンノイズを測定するような高いバンドでは、
極力NFを稼がなくてはなりません。
EMEではアンプだけでなくスタック八木アンテナなどの
分配にオープンフィーダーを使うのも、熱雑音で
考えると同軸ケーブルでは不利になるからです。

とりあえずこんなもんでいかがでしょうか?
次回はインターセプトポイント?

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