入出力特性の比較

物置の小物を整理していたら手書きのデータが
でてきました。
かなり古く色もくすんでいましたが、書いてある内容は
はっきり分かります。
どぉやら2SK125PPと3SK35・45あたりのゲインやリニアリティを
実験していた時のデータですね。
だとしたら25とか30年くらい前?
 *2SK125PPはプッシュプルではなくパラレルプッシュです。

SCN_0001

そのころ持っていたSGは最大出力が開放で100dBμ(50Ω終端で
-13dBm)だったはずで、業務用広帯域アンプを2段重ねしたら
後ろのアンプが飽和してしまったので自作のものを使い、
スペアナは仕事で常駐していたところに置いてあったので、
電測計と業務用ATTの組み合わせで測定した記憶がありますので、
精度はイマイチかもしれませんが、比較という意味では十分な
データだと思います。

当時も表計算ソフトでグラフ化したのでしょうが、もちろん
そんなものは残っていませんので、Libreofficeに突っ込んで
サラッとグラフ化してみました。
残念なことにメモはもう一枚あったはずで、入力がもっと
小さなところも見ていたはずですが見当たりません。
グラフは忠実に見つかったデータのみとしますが、これより
低レベルでは間違いなくリニアになっています。

別々に表示させると分かりづらいので、最後に比較しやすい
グラフにしてみました。

Screenshot from 2016-06-25 12-11-39

こう見ると3SK35や45のようなゲインはありませんが、+10dBmの入力にも
めげない2SK125PPのリニアリティの素晴らしさがひと目で分かりますね。
その当時多用していた1SS43ショットキーバリアDiのDBMを後段に
組み込んだ場合、RFに+8dBmも入力があればRFより先に十分
歪んでくれるので、RF段単体の特性ということです。
ただDBMの各ポートには3dBATTが挿入されているので、実際には
RFへの入力が+10dBmでもOKでしょう。
ちなみに1SS43のDBMが自作だからダメというわけではありません。
ローカルが一緒(+20dBm程度)であるなら後で入手したM9でも
似たようなものでした。

ところで10dBmは50Ω終端で117dBμ、開放だと123dBμです。
そんな強い電波はめったにないでしょう。
S9を終端の40dBμとした場合、77dBoverS9です。w

ただしここにビギナーが見逃しがちな落とし穴があります。
信号が一つしかないのなら単純ですがそぉではありません。
狭帯域(Xtalフィルタなど)を通る前のRFとMIXerは広帯域です。
この環境での入力とは受信する帯域すべてのトータルです。
ですからバンド内に強力な電波がいくつも出ていたり
全体的にノイズのフロアが持ち上がっていたりすると、
当然受信帯域のトータルとして大きな入力となります。

ちなみに大入力があると簡単に歪んでしまいそうな3SK35や45などが
全く使えないというわけじゃなく、メーカー製や自作などで
MOSFETが主流な時代がありました。
中古市場に出回っているTS-520やTS-830等にも使われています。

要は受信機のレベルダイヤグラムの考え方が全く異なるのです。
MOSFETである3SKナニガシを使用する場合、受信入力が小さな場合は
ゲインを稼ぎNFを重視しますが、大きな入力に対する歪には
AGCを掛けてゲインを下げることにより対応します。
フロントエンドでゲインを稼ぐことでIF以降の構成が楽になります。
TS-520でハイバンドの使い方そのままでローバンドを聴くと、
流石に聴きづらい・・・というか使い物になりませんでした。
で、拙生はでローバンドを聴くときは、ATTを入れて全体の入力を
下げ、AFのゲインをかなり上げて固定し、RFのゲインで聴きやすく
なるように調整していました。
これで聴きづらい局も浮き上がることが多々ありました。

逆にジャンクションFETの2SK125のゲート接地ではゲインを欲張らずに
リニアリティを保ちます。
パラやプッシュプルでも8〜10dB程度、パラレルプッシュでも10dBちょっとの
ゲインなので、パッシブなDBMのロスと相殺され、フロントエンドはほとんど
ゲインを持たず、それ以降のIFやAFに依存します。
IFにはゲインとAGCの高ダイナミックレンジおよびAFを含めて
低雑音が要求され、以前書いたように2SC1855や1856などの
フォワードAGCタイプが流行った時代がありました。
ここでは余談になりますが究極はゲインをほぼAFに依存する
ダイレクトコンバージョン方式でしょう。
AFでAGCも可能ですがピンATTが実用的です。

お気づきかとは思いますが、先に書いたTS-520での拙生流の
ローバンド受信法は、JFETにおけるレベルダイヤグラムに近い状態で
セットしたとも言えるでしょう。
ただしRFゲイン調整の多くはバイアス電圧でAGCのスレッショルドレベルを
可変させるものなので、AGCの効きが悪く(または効かなく)なり
いきなりの強い信号や空電などで耳を痛める可能性もあるので要注意です。

最近の高性能受信を謳うメーカ製のフロントエンドは、殆どが
JFETのプッシュプルとなっていることから、どちらが良いのかを
判断できる一つの材料となるでしょう。
またIF以降でDSPにより歪をキャンセルし、見かけ上のIPを高くする
技術も併用されており、この辺は自作ではハードルがググっと
高くなってしまいますね。。。

この辺あたりからもう一歩踏み込んだフロントエンドの話になると、
IPだのIMDだのNFなどと数式による説明が発生ることはは避けて
通れません。
もちろん受信機の総合評価では帯域や温度も計算式に入ってきて
面倒臭くなるのでとりあえずこの辺で踏みとどまることにします。ww

ちなもにここで言うIPは
X インターネット・プロトコル
○ インターセプト・ポイント
です。(笑

一枚のメモからこれだけ語れるのは拙生の特技です。。。

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