不具合@プレートRFC

高周波アンプの出力回路で一般的なパイ型などを
使用するときは、高周波が電源側に漏れないように
RFCとバイパスCで阻止します。

RFCの条件はいろいろありますが重要なのは

・使用周波数に対して十分なインダクタンスがあること
・特定周波数における直列共振(ホール)がないこと
・プレート電流を十分流せる線材であること
・高圧がかかる部分なので各箇所における絶縁

2015-11-16 09.16.41

某アンプに付いていたプレートRFCです。
約27μH・・・??(何度もゼロ点調整して測り直しました。)
この27μHは各周波数でどのくらいのリアクタンス
なのでしょう。

その前に必要とされるリアクタンスについて。
遠い昔にプレートインピーダンスの10倍あれば完璧で
少なくとも5倍あれば理想的と教えられました。
例えばプレート電圧が2500V、電流が800mA流れるAB2級
アンプのプレートインピーダンスは1.7KΩ前後でしょう。
その5倍というと8.5KΩです。
27μHでリアクタンスが8.5KΩになる周波数は約50MHzです。
主な周波数では
28MHz 4.75KΩ
14MHz 2.375KΩ
7MHz 1.188KΩ
3.5MHz 0.594Ω
となり、ローバンドほど全く足りないのが分かります。

では逆に3.5MHzにおいてリアクタンスが8.5KΩとなる
インダクタンスは・・・387μHです!

某アンプはプレートインピーダンスが約2.5KΩ程度で、
更に必要であり、計算すると500μH以上になります。
それが27μHということは・・・

例えばプレートインピーダンスとRFC側のインピーダンスが
全く一緒でも、半分の電力が電源側へ・・というような
単純なものではありませんがこの値はNGです。
RFCから漏れた高周波は、バイパスCによりシャーシへ
流しますがそれでも電源側にはかなりの漏れがあるでしょう。

2015-11-16 09.15.35

上の写真は試しに小さなRFCを追加してみたところ。
測定では8μHしかなく合計でも35μHしかありませんが、
21MHz以下においては、最大出力となるチュニング位置が
若干変わりました。

ではどのくらいのRFCを巻けば良いのでしょう。

2015-11-16 10.05.11

この写真の大型RFCで220μHです。
3.5MHzにおいて4.8kΩ強となり、プレートインピーの
2倍程度ですが、リニアアンプのお手本とされるアメリカの
C社のもので、最低周波数が3.5MHzのアンプに付いている
RFCが80μH(実測)だったことから、十分使い物になると
という推測ができます。
残念ながらこの大型RFCは、スペース的に某アンプには
使えません。

やはりスペースファクタを稼ぎつつインダクタンスも
稼ぐにはトロイダルコアに登場してもらはなくては。
このアンプにはシャーシ側にFT-240#43、球側にFT-114#43
を足し増しして、インダクタンスの合計を300μH以上としました。

それでも十分ではありませんがスペース的に限度です。
トロイダルコアをもっと密巻きにすれば、リアクタンスは
簡単に稼げるのですが、密巻きによる別の問題が発生します。

結果

7MHzや3.5MHZにおけるチュニング位置が大幅に変わりました。
プレートと出力の間にぶら下がって結果的にプレートインピーを
低下させていたためにハイCローLでしたが、正常値に
近くなったのですからCが少なめでチュニングが取れます。

結果その2

3.5/3.8MHzでプレート電流の還流経路に入っているFUSEが
切れる症状が緩和されました。
出力の一部が漏れてしまうのですから、アンテナ側に
パワーをひねり出そうとすると、球が余分に頑張ってしまい
過電流が流れるのは当たり前ですね。
しかし、まだ十分な値でないため押しすぎると切れますが、
切れにくいように大きな値のFUSEを使用すると、還流路に
入っているバイアス用のツェナDi(15V50W)の耐電力が
怪しくなるのでそうはいきません。

推測

このアンプはハイバンド専用として改造され、オリジナルの
RFCよりも太い線材で巻き直したものであり、巻き数が
減ったためにリアクタンスも減ったのでしょう。
と言っても、プレート電流が十分流せる太さが必要なので、
ワンランク細い線に巻き直しても40μHしかありませんでした。
だからバイパスCが異様に大きな値なのですね。。。
このへんは設計思想としか言いようがなく、もしかしたら
これでも大丈夫なのかもしれませんが、拙生としてはこのような
値のプレートRFCは気持ちが悪くて使う気になれませぬ。

結論

小さなケースにムリックリ押し込めたことによる弊害でしょう。
球の能力がまだあるからとオリジナルより高い電圧を掛けたり、
ハイバンド専用に改造したものを譲り受けて、ローバンドでも
そのまま使用したことも、不具合の大きな要因であります。

反省

以前別なところを修理・改造した際に、このRFCについては
全く注視しておらず、最後の試験において3.5MHzでFUSEが
飛ぶことで気づきました。
もっと早くに気づけば・・・と反省しております。

ちなみに

トップバンドのRFCが難しいと言われるのはこのへんの事情です

*コイルのリアクタンスは誘導性リアクタンスであり
 ≒コイル単体のインピーダンスであります。
 コイルのインピーダンスでも大差はないのですが、抵抗の
 インピーダンスという言い方に違和感があるから使いませぬ。
 (分かるかな?)

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